ベンゲル効果で外国人監督が主流に 飲酒文化をなくしプロ意識を向上 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生④】
1993年からブラックバーンでプレーしたルソー氏が1997年にチェルシーに復帰すると、イタリア代表のジャンフランコ・ゾラやロベルト・ディマテオ、フランス代表のフランク・ルブーフら多くの外国籍選手が在籍し、以前と見違えるほど国際色が豊かなクラブに生まれ変わっていた。元オランダ代表のルート・フリットや元イタリア代表のジャンルカ・ビアリが監督を務めた時代は、試合前夜であってもチーム宿舎で食事のテーブルにワインボトルが置かれることもあったという。 ▽ピッチ外でも異国文化浸透 「イギリス人が『一杯飲んだら止まらなくなるかもしれない…』と敬遠するのに対し、イタリア人であれば『これで眠りにつきやすくなる』とスマートにグラス半分だけ飲んで部屋に戻る。国によって酒に対する考え方が違うのは不思議だった」。こうしてピッチ外でも徐々に異国文化が受け入れられるようになった。 チェルシーは世界最高峰だったイタリア1部リーグ(セリエA)で名選手として活躍したフリット、ビアリの前にも、かつてフランス1部リーグのモナコでベンゲル監督の下でプレーしたグレン・ホドルが監督を務めていた。
「彼らはみんなイングランド式サッカーの良い部分を理解して残しつつ、国際的な考えを持ち込んだ。それにスポーツ科学を取り入れたら見事にはまった」とルソー氏。サッカーの「母国」のプライドを守りつつ、外国の血をバランスよく融合させることが、成功への近道として現在に至るまで多くのチームの指標となった。 ▽外国人監督が主流に ベンゲル監督の成功が外国人指導者への抵抗や偏見をなくすきっかけとなり、2001年にはスウェーデン出身のスベンゴラン・エリクソンがイングランド代表で初の外国出身監督となった。2004年には伏兵のポルト(ポルトガル)を欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝に導いたジョゼ・モウリーニョをチェルシーが監督に招聘。ポルトガル出身で当時41歳の若きカリスマは、就任1季目にチームを50年ぶりのリーグ優勝に導いて新風を吹き込んだ。 選手と同じように監督も世界のビッグネームが集まるようになり、近年はスペイン出身のジョセプ・グアルディオラ監督がマンチェスター・シティー、ドイツ出身のユルゲン・クロップ監督がリバプールを率いて多くのタイトル獲得だけでなく戦術のトレンドも生み出すなど圧倒的な影響をもたらしている。