長谷部誠(フランクフルトU-21コーチ)「調整力や柔軟性が成功の秘訣だったように思います」
元サッカー日本代表の長谷場誠が語るリーダー論。厳しい勝負と競争の世界を生きるアスリートたちを勝利に導く指導者、キャプテン、それを陰でサポートするコーチから学べることは? 【写真を見る】“キャプテン長谷部”の名場面をチェック!
長谷部誠「まずやってみて、信頼を勝ち取る」
9月に始まるFIFAワールドカップ26アジア最終予選に臨むサッカー日本代表メンバーの発表会見、最大のサプライズは、長谷部誠の電撃入閣だった。これは森保一監督直々の要請だったそうだ。『GQ JAPAN』がそんな長谷部を取材したのは7月上旬のこと。当然入閣は知らされていない。“元日本代表キャプテン”のリーダー論を語ってもらう企画だ。 多くの人に「日本代表のキャプテン」と記憶されているだろう長谷部は、実直さや誠実さもあってリーダーの鑑というイメージを抱く人も多いに違いない。しかし、初めて代表キャプテンを務める際には戸惑いがあった。なにしろ抜擢されたのはW 杯南アフリカ大会の開幕直前。チームが最悪の状態にあったなかで、サッカー界最大の舞台でいきなりリーダーを任されることになったのだ。 「岡田(武史)監督から『お前にやってもらうから』と言われて、『いや、ちょっと待ってくださいよ』と。青天の霹靂でした」 “ザックジャパン”の頃は特に悩んだようだ。「気持ちが入り過ぎて、キャプテンとはこうでなくてはならない、という固定観念に縛られていましたね。自分のパーソナリティと合わないことをやり過ぎた」と振り返る。 「今にして思えば、みんなのやり方、考え方を、1つにまとめようとし過ぎていたんです。でも、勝ちたいという目標が同じであればプロセスは違っていてもいい、と今では思えるようになりましたが、多様性という考え方が当時の自分にはまだ理解できていなかった。みんなを1つにしなきゃ、みたいな考えは、当時の反省としてあります」 しかし、そこから長谷部は誰もが認めるリーダーへの道を歩みだす。本人いわく「バランス型」を意識したのが成功の理由だ。本田圭佑や遠藤保仁、長友佑都といった個性の塊のような選手たちがチームとしてまとまったのは、長谷部の調整力によるところが間違いなく大きい。 「グイグイ引っ張っていくというよりは、監督と選手のバランスを見て、調整するスタンスです。監督が変わればやり方も変わりますし、僕はバランス型、調整型ということになります。それをリーダーというのかはわからないですけれど、それぞれの組織に合ったリーダー像がやっぱりあると思います」 こうした柔軟性が、やがてプレイスタイルにも結実していく。チームのバランスを取る──それをピッチで体現し続けた。 「プレイ自体も、若い頃よりもバランス型に寄っていった感じがありますね。そのスタイルを追求したおかげもあって、世界のトップリーグで晩年までキャリアを続けることができたわけですから。自分のなかでは、調整力や柔軟性が成功の秘訣だったように思います」