メタノールで妻殺害、被告の製薬大手元研究員に懲役16年判決…東京地裁
妻に毒性の強いメタノールを摂取させて殺害したとして殺人罪に問われた製薬大手「第一三共」の元研究員、吉田佳右(けいすけ)被告(42)の裁判員裁判で、東京地裁は30日、懲役16年(求刑・懲役18年)の実刑判決を言い渡した。坂田威一郎裁判長は「被告がメタノールを摂取させたとしか考えられない。高度な計画性があり、強固な殺意に基づく冷酷な犯行だ」と述べた。弁護側は判決を不服として即日控訴した。 【写真】吉田佳右被告(2022年9月16日撮影)
判決によると、吉田被告は2022年1月14~15日頃、東京都大田区の自宅マンションで妻(当時40歳)にメタノールを摂取させ、急性中毒で死亡させた。
死因がメタノール中毒であることに争いはなく、公判では吉田被告が摂取させたかが争点となった。弁護側は「妻が自らメタノールを摂取した可能性がある」と無罪を主張していた。
判決は、妻が愛飲していた焼酎のパックにメタノールによって生じた可能性が高い痕跡が残っていたことや、メタノール摂取後に水風呂に入るなどの異常行動を繰り返した妻を吉田被告が丸1日間放置したことを挙げ、「被告がメタノールを摂取させたと考えれば合理的に説明できる事情だ」とした。
さらに、吉田被告には、勤務先でメタノールを入手できる機会があり、妻から暴言を言われたり子供から隔離される仕打ちを受けたりして殺害の動機もあったなどと指摘。第三者が摂取させた可能性はなく、「妻の自殺をうかがわせる事情も一切見当たらない」とし、被告が犯人だと結論付けた。
判決は、吉田被告が殺害が発覚しにくい方法としてメタノールを準備したと非難。夫婦関係に不満を募らせた末の犯行と考えられるとし、「問題解決に向けて努力せずに殺害という手段に訴えたことは短絡的で身勝手だ」と断じた。