派閥解体で「無敵の首相」になった岸田政権が「自民党補選3連敗」に沈んだ「本当の理由」
6月解散で「補選の再来」が起こるか
また、3月20日のFRBより公表されたFOMCによる経済見通しでは、インフレ率(個人消費支出デフレータ)について、2024年2.4%、2025年2.2%。実質GDP成長率では、それぞれ2.1%、2.0%。さらに、日銀にはない失業率見通しもあり、それぞれ4.0%、4.1%となっている。失業率が下がらないのは失業率がほぼ下限近くになっているからだろう。 日銀もFRBもともにインフレ目標は2%である。インフレ率の見通しでは、両国に大きな差があるとは言えない。 しかし、日銀は3月に利上げをしたが、さらに植田総裁は追加利上げの意向を隠さない。一方、FRBは、年内に3回利下げするとの見通しを明らかにしている。 日銀とFRBの一番大きな相違点は、経済見通しにも表れているが、雇用つまり失業率を考慮するかしないかだ。2023年2月13日付けの現代ビジネス〈岸田政権のサプライズ「植田総裁」人事で、これから起こることを予言しよう《高橋洋一の視点》〉で指摘してきたが、植田総裁は雇用より金融機関経営を優先する。そのため、ビハインド・ザ・カーブを無視して利上げに前のめりになる。 日銀の主たる目的は、日銀法においては「物価の安定」である。これは日銀法2条に規定されている。物価の安定が二重の責務(物価・雇用の安定)から雇用の確保につながるのはFRBを含む世界の中央銀行では常識だ。つまりFRBなどの先進国中央銀行固有の目的といえば二重の責務となる。 しかし、日銀は雇用について、明示的に言及しない。それが経済見通しにもでている。FRBは法的根拠なしでも歴史的に二重の責務を負っている。日銀も二重の責務のために経済見通しで失業率を加えるべきだ。 冒頭に述べた通り、岸田政権は補選3連敗だ。なおも有力派閥解散した自民党内で「岸田降ろし」の兆候はまだない。それどころか、6月解散のために、自民党で夏の活動費の支給を前倒しするという観測も出ている。 そうなった場合、島根1区の再来が起きるかもしれない。保守王国で、財務省候補で島根1区が負けたのは、政策論的には、震災対策と経済が無関係ではないだろう。
髙橋 洋一(経済学者)