派閥解体で「無敵の首相」になった岸田政権が「自民党補選3連敗」に沈んだ「本当の理由」
日銀が「動いてはいけない」ワケ
こうした政府の「渋ちん」な姿勢は、日銀の金融政策にも間接的に影響を与えているだろう。 3月19日の金融政策決定会合で日銀はマイナス金利の解除を決めた。これは金融引き締めであり、政府の財政緊縮と表裏一体である。 インフレ目標は2%であるが、3月の利上げ直前、2月27日公表の1月のインフレ率は、いずれも前年同月比で消費者物価総合指数2.2%、生鮮食品を除く総合指数2.0%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数3.5%だ。この程度で、本格的なインフレとは言いがたい。 まず、インフレ目標の2%はプラスマイナス1くらいの幅がある。それに加えて、金融引締めは遅れて行う、いわゆるビハインド・ザ・カーブの運営なので、少なくとも4%くらいまでは動くべきでない。 特に、コストプッシュの場合にはインフレ率の上昇が継続的などうかを見極めるために、すぐには動かないのだ。今の日銀は、今年1月の日銀展望レポートで消費者物価指数(生鮮食品を除く)の前年比は2.4%と昨年10月の2.8%から下方修正されているので、こうした見通しからも、筋論としては動いてはいけない。 なお、アメリカのインフレ目標は、コア個人消費支出価格指数(対前年同月比)でみていが、金融引締めを開始した2022年3月のコアは5.4%。金融引締めにより、その後一時上がったがすぐにピークアウトし低下に転じて11月コアは3.2%になっている。この動きは、まさに金融引締めは遅れて行う、ビハインド・ザ・カーブだ。 なぜ、日銀とFRBに違いがあるのか。そのため、まずそれぞの経済見通しを見てみよう。 4月26日に日銀より公表された経済・物価情勢の展望では、消費者物価指数(除く生鮮食品)の対前年度比について、政策委員の見通しは、2023年度2.8%、2024年度2.8%、2025年度1.9%と、インフレ目標の範囲内といってもよく、物価高騰の問題は見えない。 また、実質GDP成長率は、それぞれ1.3%、0.8%、1.0%と1月段階より下方修正されている。