観光庁・観光産業課長が語った2023年の総括と提言、旅行業で多発した不正事案に「全力でケジメ」を
旅行業の不適正事案は遺憾、改めて遵法精神の徹底を
一方、今年5月には日本旅行と近畿日本ツーリストで受託事業での不正請求が発覚。11月には青森市のコロナ関連業務の入札案件で、大手の会員会社5社の談合疑いが明らかになった。庄司氏は「不適正事案への対応に追われる1年でもあった」と振り返り、「何度繰り返しているのかというのが率直な感想。憤りを感じている」と苦言を呈した。 いずれも、非旅行分野での不正で、旅行業法違反ではないが、「公金を使った不正は、国民を裏切る行為」と断罪。「業界が持っている負の体質があるのではないか。利益至上主義があったのではないか。ルールを守る、契約を履行することが疎かになっているのではないか。総点検をして、直していく必要がある」と指摘した。 観光庁は、再発防止策の取りまとめで日本旅行業界(JATA)に対して第三者委員会の設置を指導。JATAは、12月にコンプライアンスと企業倫理の専門家で構成する有識者委員会を設置し「総点検」に乗り出した。委員会では、(1)会員各社による点検調査での留意事項、(2)点検結果からの原因分析、(3)JATAのこれまでの再発防止対策の評価と改訂に向けた指導助言、の3点を取りまとめる。 不適正事案は支店レベルで発生していることから、庄司氏は「経営陣だけでなく、末端まで遵法精神が行き渡っていたのかどうか」と疑問を呈し、改めて社内コンプライアンスの確立、適法性の遵守の徹底を求めた。 また、不適正事案は旅行業以外のBPOなどで起きているが、「法を守らないことが会社として蔓延しているのてあれば、それは旅行事業でも影響が出かねない。社内コンプライアンスや取引先との適正な契約やその確認を疎かにすると、必ず安全の問題に関わってくる」と危機感を示し、安全は行政として最も重重視する側面であることを強調した。 そのうえで、「業界は膿を出し切って、全力でケジメをつけてもらいたい。来年は業界と旅行の発展について対話できる年にしていきたい」と力を込めた。 今年は、海外OTAであるブッキング・ドットコムの支払い遅延問題も発生した。海外OTAは旅行業法適用外ではあるが、トラベルボイスからの質問に対して庄司氏は「一義的には本国の法律が適用されるが、観光庁としては、不適正と言われる事案が起きないように緊張感を持って、事業を行ってほしい。利用者や事業者に不利益にならないよう、可能な範囲で指導していく」考えを示した。