2025年も東証改革による日本株上昇を期待する
レベル1は、現状分析や取り組みの検討が十分でない状況 レベル2は、現状分析や取り組みの内容が投資者に評価されていない状況 レベル3は、投資者から一定の評価を得たうえで、さらなる向上が求められる状況 最悪なレベル1の具体例は、現状分析・評価が表面的な内容にとどまる。取り組みを並べるだけの開示となっている。合理的な理由もなく、取締役や社外取締役などが対話に応じない。 レベル2の具体例は、現状分析が投資者の目線とズレている。目指すバランスシートやキャピタルアロケーション方針が十分に検討されていない。目標設定が投資者の目線とズレている。課題の分析や追加的な対応の検討を機動的に行わない。
レベル3の具体例は、不採算事業の縮小・撤退の検討が十分に行われていない。業績連動の役員報酬が、中長期的な企業価値向上に向けたインセンティブとなっていない。対話の実施状況の開示が具体性に欠ける。 各企業は、各ギャップ(レベル1~3)に対応した「投資者の視点を踏まえたポイント」と「事例集(プライム市場編、スタンダード市場編)」を参照しながら、投資者の視点を踏まえた取り組みを推進すべきだろう。こうした一連の取り組みは、全上場企業の実力の底上げになるはずだ。中期的な日本株の真の変革に期待したい。
■企業の対応次第でまだまだ日本株は上昇の余地がある 東証は多くの企業の開示内容にまだまだ改善の余地があると考えているようだ。私は、現状維持で変化したくない企業側には依然としてアレルギーがあるため、あえてこうした「形式」から入ったのだと思う。今後は、企業への規律付け効果への期待とともに、今回の事例集も踏まえつつ、投資家と企業の対話が進むことが期待できる。 それでもなお、日本では本質的な資本コストに対する馴染みは薄い。山道CEOが言うように、幅広い企業が自主的に資本コストへの取り組みを進め、日本市場の価値向上につながる「長い道のりの序章」ともいえる段階だ。「自己(自社)株買い等の株主還元」や「生ぬるいコスト削減・抜本的な解決につながらない事業再編(効率化)」だけでは、短期的には株価を上げる効果があっても限界がある。
一連の改革を通じて、付加価値の高いモノ・サービスの売り上げを持続的に増加させて本業で稼いでほしい。日経平均やTOPIXが、本格的に上昇するには、それぞれの企業がもっと高みを目指さなければいけない。 (当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
糸島 孝俊 :株式ストラテジスト