人気ラーメン店に「毎日5秒だけ営業電話」。ラーメン通販サイトが新規開拓で味わった“苦労と執念”
コロナ禍は“ジェットコースター”のような怒涛の日々だった
コロナ禍に入ってからは、巣篭もり消費の増加によって、宅麺.comのニーズも急激に高まった。 コロナ禍以降、会員数は3倍に増え、急成長を遂げたわけだが、「正直何が起きているかわからないような混沌とした状態が続いていた」と野間口さんは振り返る。 「2020年に起きたコロナウイルスによる巣篭もり消費の爆発的な需要は、あまり具体的には想像できませんでした。本当にいつの間にか1日の売り上げが一気に伸びていって。緊急事態宣言下では、飲食店が営業できなかったこともあり、ラーメンを食べたいお客様や宅麺.comで商品を販売したいラーメン店が殺到する状況でした。 さらに、テレビやメディアへの露出もかなり増えたことで認知度も上がるなど、1万食の在庫を入れても1時間も経たずに完売するくらいの勢いがずっと続きましたね」 野間口さんは「毎日、朝から晩までジェットコースターに乗っているような感覚だった」と表現する。 まさに巣篭もり消費のビッグウェーブがどれだけすごかったのかを物語っていると言えるのではないだろうか。
足掛け10年以上かけて口説くことも。営業の“執念”は今でも変わらない
現在、宅麺.comは全国に300店舗以上の有名ラーメン店がパートナー店舗として加盟しており、今でも新規開拓を継続しているそうだ。 首都圏を中心に、美味しいラーメンがあると知れば、地方でも駆けつける。このスタイルは15年間変わっていない。 野間口さんも大のラーメン好きで、毎日ラーメンを食べているとか。 「営業のために、目星をつけたラーメン店に足を運び、食べた後に名刺を渡すこともありますし、既存のパートナー店舗の店主と関係性をキープするためにお店へ顔を出す場合もあります。知名度や話題性のあるラーメン店はひと通り行くように心がけていますね」 1回で商談が決まることは稀で、基本的には何度も通って信頼関係を構築していく長期戦が主となっている。 「大阪の豚骨ラーメンで有名な『無鉄砲』というお店に営業した際、『忙しいから5秒だけ話を聞く』と言われたので、毎日5秒だけ電話して自己紹介や用件などを伝えることを繰り返し、最終的には3分間話せるようになったんです。その行動を店主が面白がってくれて、無事に契約となったのは今でもエピソードになっていますね」 また、「ここは絶対に宅麺.comで扱いたい」というお店の場合は、10年スパンで口説いていくこともあるそう。 「北海道の某ラーメン店は、最初に営業をかけてから13年間通い続けて、契約に結びついたこともあります。最後は断る理由が1つもなくなって、承諾いただけたのですが、やはり諦めないことが大事だと感じています。 ラーメン店としては世界で初めてミシュラン一つ星を獲得した代々木上原の『蔦(つた)』は、それこそ10年越しで販売までこぎつけました。『自分の技術がやっと野間口さんの熱意に追いついた』という言い方を店主がしてくれたのは、とても感慨深かったなと思っています」 今後は個人店を中心としたラーメン店とのネットワーク拡大に加えて、大手企業と提携することでさらなる販路拡大を目指していくという。 「宅麺を文化にする」ことを掲げ、ラーメン業界を盛り上げていく。宅麺.comの飛躍に期待したい。 <取材・文・撮影/古田島大介> 【古田島大介】 1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
日刊SPA!