「高層マンション住みは流産率が高まる」データあるんですか? 論拠の信憑性を医師が解説
研究内容への受け止めは?
編集部: 今回取り上げられた研究内容は1994年のもので、30年前の発表内容です。この内容が現在と同様に語ることができるのかを教えてください。また、流産の原因や予防法についても教えてください。 馬場先生: 今回話題に挙がった研究は1994年のものではありますが、居住環境が流産率に影響を及ぼす可能性を示唆できるものだと考えられます。妊婦の居住階数が高いほど、流産率が高まるという研究結果は大変興味深いです。 ただし、今回の研究対象の人数は1195人と少ない印象です。また、交絡因子の調整や解析が妥当なのか、統計学的に吟味する必要はあります。加えて、横浜市の一部地区のアンケート調査であり、ほかの地域(東京都内や地方都市、郊外、高度が高い地域など)にも当てはまるものなのか、さらなる研究報告が気になるところです。 流産の原因は胎児側の要因が多くを占めており、胎児の染色体異常・遺伝性疾患・先天疾患などが知られています。染色体の数が違う、受精卵が正しく分裂しない、遺伝的な異常を認める場合などに早期に流産してしまう場合があります。その一方で母体側の要因としては、子宮筋腫、子宮形態異常、子宮頸管無力症、感染症などに伴う子宮の炎症反応、喫煙習慣・アルコール摂取・有害薬物の使用・カフェイン過剰摂取などの「生活習慣」、糖尿病(妊娠糖尿病)、高血圧(妊娠高血圧症候群)、甲状腺疾患などの合併症や併存症などが知られています。それ以外にも、加齢によって流産率は高まりますし、外傷や重大な事故などがきっかけで流産となるケースもあります。加えて、肥満・痩せ、妊娠中の体重管理、過剰なストレス、化学有害物質、放射線なども流産リスクとして挙げられます。 ご自身でできるような流産を予防する方法として、栄養バランスの良い食事・適度な運動・十分な睡眠など健康的な生活習慣をするとともに、妊娠中の体重管理をしっかりとおこないましょう。また、喫煙・飲酒・カフェイン摂取などは控えて、有害薬物・ドラッグなどは決して手を出さないでください。そして、感染予防のために、妊娠前に必要なワクチン接種を受けること、手洗いなどを積極的におこなうこと、食事前の衛生管理などを徹底しましょう。妊婦健診は決まったタイミングで受診するとともに、持病がある場合は主治医に妊娠している旨を伝え、定期的に診察を受けてください。 妊娠期間中は、体の変化だけでなく様々な環境の変化からストレスがたまりやすい時期です。自分なりのストレス解消法を見つけておくとともに、つらい場合には周囲にサポートを求めることも重要です。カウンセリングや支援グループなども積極的に活用しましょう。