【解説】「冤罪はなぜつくられるのか」…角川人質司法違憲訴訟の弁護士が語る“冤罪から身を守る方法”とは
勾留が長引くと「やった」と自白してしまう
勾留が長引くと「虚偽自白」が生まれることがある。やってもいないことをやったと自白してしまう理由を西氏はこう語る。 「『自分は本当にやっていないから裁判できちんと話せばわかってもらえる、有罪にはならないだろう』と将来の不利益を軽視し、取り調べを受ける目先の苦痛から逃れたいために『やりました』と言ってしまうのです。自白を得た捜査官は供述をより具体的に取ろうとし、一旦虚偽自白をした人も苦痛を逃れるために自白の内容を作ってしまう。その詳しい内容の虚偽自白を見た検察官は本当の自白だと起訴し、裁判官もこれは本当の自白だと考えて有罪判決を出してしまいます」 国際的には「身体不拘束原則」があり、推定無罪である以上「裁判に付される者を抑留することが原則であってはならない」と「自由権規約」に定められている(日本も1979年に批准)。しかし人質司法はこれに違反していると西氏は語る。 「誰もが釈放された状態で訴追者側と対等な立場として、刑事裁判を受けるのがグローバルスタンダードです」
逮捕=犯人であるかのような報道をやめる
そして西氏は「人質司法は憲法にも反する」と続ける。 「いま私は角川人質司法違憲訴訟の弁護団にいますが、人質司法は裁判を受ける権利や人身の自由を侵害し、人間の尊厳を傷つけるものであって、憲法に反するものと言えます。人質司法を解消し、無実の人が裁判で無実を主張して無罪を勝ち取れるという司法にしていかないといけません」 冤罪の再発防止のためには、捜査機関の原因検証や再発防止策の徹底はもちろんだが、メディアにも「逮捕=犯人であるかのような報道をやめることが求められる」と西氏はいう。 「袴田事件も当時そういう報道があったことが分かっています。捜査機関が逮捕したら犯人に決まるわけではなくて、裁判で有罪判決が宣告されて初めてその人が犯人と確定されます。それまでは推定無罪を前提とした情報の取り扱い、報道のあり方を考えないといけません」