【解説】「冤罪はなぜつくられるのか」…角川人質司法違憲訴訟の弁護士が語る“冤罪から身を守る方法”とは
犯人に間違えられたら「黙秘」と弁護士
ではもし私たちが犯人に間違えられ突然逮捕された場合、何をしたらいいのか。 西氏は「まず弁護士を呼んでください。そして弁護士と相談するまで黙秘してください」と強調する。 「例えば取り調べで『3日前に何をしていたか』と聞かれても覚えていないのが普通だと思います。しかし曖昧な記憶で発言して実際と異なっていると、捜査官は『この人は嘘をついている』と疑いが増してしまう。だからこそ、取り調べで話すかどうか、話すとしても何をどう伝えるかなどについては弁護士に相談したうえで取り調べに臨む必要があります。弁護士を選任する権利は憲法で保障されているので、逮捕勾留されていても求めがあれば警察は弁護士を呼ばないといけないルールになっています」 日常生活の中でも冤罪が生まれやすいのが痴漢に間違えられることだ。 この場合、西氏は「大事なのは有罪であるかのような振る舞いをしないことと、防御のための行動をとること」だという。 「例えばその場から無理やり逃げたり、その場を収めようと示談の交渉をしないこと。防御のための行動としては、その場で目撃証人を探すのが大事です。また取り調べを受けるにあたっては弁護士を呼んで黙秘をすること。さらに取り調べ中に自白を強要されたらメモを取って弁護士に伝えれば、弁護士は警察や検察に抗議文を送り、そういった取り調べが無いように対応することができます」
日本の取り調べ時間は突出して長い
日本の司法は「自白偏重」と言われ、取り調べ時間は平均22時間と他の先進国に比べ突出して長い。アメリカは1~2時間から数時間程度、イギリスでは30分以内が大部分だ。日本では「真相解明の名の下、取り調べに依存した捜査になっている」(西氏)と言われ、これがいま問題視されている「人質司法」の背景となっている。 「人質司法とは裁判で無実を訴える人ほど、身体拘束をされてしまうという刑事司法の運用」だと西氏は語る。 「無実を訴える人ほど自白している人に比べて『この人は逃亡や罪証隠滅のおそれがある』と見られて釈放されない。実際に捜査機関が『このまま否認していたら裁判が長引くぞ。外に出られないぞ』と言って人質司法を利用することもあります。また身体拘束を判断するのは裁判所ですが、裁判官による法(※)の解釈運用がすでに固まっているため、この人質司法がなかなか無くならないのです」 (※)刑事訴訟法第60条第1項