創業170周年を迎えるTIMEX(タイメックス)は高級時計の異常な盛り上がりに冷笑を浮かべる【CEO&デザイナー取材】
過去と現代、デザインとイノベーションの融合
–タイメックスは毎年多くの新作を発表していますが、いったいどのような流れで新作の開発に着手するのでしょうか? インディグロナイトライトに代表される数々のイノベーティブな製品の開発については、専門の部署があるのでしょうか? マルコ「この10年、タイメックスは様々なアプローチをしてきました。それら多くの開発の背景にあったのは、ミッドセンチュリーの時代に作られた膨大なアーカイブです。最近出した『マーリンジェット オートマティック』もそうですね。あれは現代のイノベーティブな技術によって、再解釈したモデルです。そうしたレガシーを継承する流れは今後も続けることになるでしょう。そして新しい技術開発などについて。タイメックスはアメリカのブランドですが、スイスやフランス、ドイツに拠点があり、フィリピンやインドには工場を構えています。デザインセンターはイタリアですし、ヨーロッパやアジアにもグループの輪は広がっています。さらにフランスのブザンソンにあるナノテクノロジーの会社にも出資するなど、多彩な分野のサプライヤーと協力体制があります」 ガリ「そうした幅広いマーケットのトレンドをキャッチアップしてプロダクトを開発していくのです。ある国でアウトドア市場が賑わっていればそれにマッチしたものを作りますし、その中で『こういう機能があったらいいのに』という意見にも耳を傾け、様々な対話を繰り返しながらタイメックスの価格での実現可能性を探ります。戦後のアメリカで『エクスペディション』が出てきたり、ランニングがブームになったことで『アイアンマン』がでてきたり。そうしたライフスタイルを見据えたテクノロジーとデザインが融合した時計を開発してきましたし、これからも続けていくことになるでしょう」
1854年からの歴史を未来へと繋げるための時計作り
–ガリさんの名前が入った限定の機械式時計「ジョルジオ・ガリ S2 オートマチック」は15万円を超える価格ながら入荷のたびに完売と聞きました。 ガリ「あの時計は『タイメックスの機械式時計が欲しい』という需要を見据えたもの。スイスメイドの機械式時計は高額になりますが、それに見合うだけのハイクオリティに仕上がり、マーケットでも高評価を得ることができました。S2はミドルケースにチタンを使い、オニキスブラックの文字盤をセットしました。ステンレススチール製のスケルトンラグは射出成形の技術を用いています。タイメックスは1970年代にはスイスメイドの機械式時計も手掛けていたので、そうした歴史に敬意を払いながらデザイナーとして培ってきたすべてを反映しました。実はすでに第2弾も考えていて、プロトタイプもあります」