中島健人、夢の海外進出は「現実になると思っていなかった」 全編英語の台詞に強いプレッシャーも
■『コンコルディア』が次の未来を切り拓いた
11月8日から配信中のHuluオリジナル『コンコルディア/Concordia』にて、海外ドラマデビューを果たした中島健人。これまで、インタビュアーなどとして流暢(りゅうちょう)な英語を披露してきた彼が、今度は役者として全編英語の芝居に挑む。夢見た海外作品で「とにかく刺激を受けたかった」と話す中島に、製作総指揮のフランク・ドルジャーやバーバラ・イーダー監督と濃密なセッションを重ねて作り上げたという本作への熱い思い、そして海外作品の出演を夢見るきっかけとなった、ターニングポイントを語ってもらった。 【写真】横顔も美しい! 中島健人の撮り下ろしカット(全3枚) 本作は、カメラとAIに網羅されたコミュニティー“コンコルディア”を舞台としたAIサスペンス。『ジョン・アダムズ』や『ローマ』、Huluで配信中の大型国際ドラマ『THE SWARM/ザ・スウォーム』など、話題作を次々と手掛けるフランク・ドルジャーが製作総指揮を務めた同作で、中島は、コンコルディアの心臓部である最先端AIシステムの生みの親で、最高技術責任者として活躍している日本出身の鬼才、A.J.オオバ(アキラ・ジョン・オオバ)を演じる。 ――海外ドラマ初出演、そして全編英語でのお芝居はいかがでしたか。 中島:臨機応変に対応するということがマストの世界で日々流動的だったというか、日本では感じることのないプレッシャーのようなものはあったかもしれないです。海外ドラマは、台詞や物語が書いてある脚本自体が製本されていないので、当日撮影するシーンの台本が紙で配られて、変更点もその日に知らされるんです。日本だと2日前や前日の変更とかはありますけど、当日に変更して、しかもそれが今回は言語が違う英語なので、その変化みたいなものにギャップを感じました。今までインタビューで英語を使ったりしていましたけど、表現という部分は初めての領域だったので何も分からなくて。とりあえず当たって砕けてみたらいいんじゃないかなと思って臨みましたね。 うれしかったのが、イザベル役のナンナ(・ブロンデル)に「普段英語を使う私たちにとっても、あなたが喋るA.J.の台詞は滅多に使わないから、専門用語とかよく言えてすごいわね」って言ってもらえたこと。海外の役者さんと同じステージに立っていることが信じられないというか、この1年は自分の人生であり得なかったことの連続だったので、28歳の僕にとって結構衝撃的でした。 ――日本語と英語だと性格が変化する人もいるようですが、中島さんは変化する・しないのどちらだと思いますか。 中島:普段英語を使っている僕は、おそらく外国人の方からすると“かわいい”と思われていると思います。「なんかこの子すごい熱量あるな、いろいろなこと話してくるな」みたいな。「あれでね、これでね、こうなんだよね。僕これやりたいんだけどどう思う?」といったようにめちゃくちゃ捲し立てるので…でも、日本語でも変わらないですね(笑)。当時、撮影期間中が『おまえの罪を自白しろ』の公開を控えていた時期だったので、ノア役のシュテヴェン(・ゾヴァー)に作品の概要を頑張って全部英語で説明した記憶もあります。 でも、A.J.を演じている時はすごく嫌なやつだったので、そのかわいさみたいなものはなかったかな。A.J.は、イザベルに高圧的に接したり傲慢(ごうまん)な部分もあったりして、なかなか首を縦に振らないプライドが高い性格だけど、僕は逆に自分をしっかり持っていてブレない生き方でかっこいいなと感じました。なので、A.J.として英語を喋っている時は、違う人格で話しているような気がして夢みたいでした。 ――フランク氏が、中島さんが他の俳優の皆さんにアドバイスを受けていたのが印象的だったとおっしゃっていましたが、どんなことを聞いたのでしょう? 中島:分からないことは全部聞いていました。いろいろな役者さんがいましたけど、たぶん自分が1番フランクやバーバラ監督に質問していたんじゃないかな。逆に、フランクに聞きすぎて「これ以上はバーバラに聞いた方がいいよ」って言われることもあったりして。「なんだこの日本人は」って思われるレベルで、たくさん提案もしました。 僕の撮影はローマだけだったんですけど、作品自体はドイツだったりミラノだったり、様々な場所で撮影しているので、「行きたいです! ミラノのシーンを増やしてください」って言ったんです。新参者かつ新人で初めて海外ドラマに出る日本人なのに、めちゃくちゃ言ってくるなっていう感じだったと思います(笑)。 ――ロケを増やしたいというのは、A.J.オオバのシーンをもっとたくさん作りたかった? 中島:そうですね。A.J.は、基本的に室内の支配者みたいな役なんです。室内で威張っているだけで外に出てないなと思ったので、フランクに「ミラノでキックボードに乗るシーンとかない?」って聞いたりして。そうしたらフランクも、A.J.の外のシーンを作りたいと言ってくれたんです。それで協議が始まったんですけど、結果ミラノには行けませんでした。何というか、フランクたちをめちゃくちゃかき回していましたね。でも本当に優しい方たちで、自分のわがままだったりをすごく聞いてくれたんです。 実は衣装も、ほぼ僕の好みで。僕がA.J.に似合うかなって思ったものを送ったら、向こうのスタイリストが「健人がこういうの着たいって言うから持ってきたよ。どれがいい?」ってレコメンドの衣装をたくさん持ってきてくれました。僕は最初からモックネックのイメージだったんですけど、1話から6話までA.J.に心理的描写の変化があって、徐々に野心で満ちあふれていくからその時にフォーマルな感じに仕上げていこうという話に。最初はシャツとTシャツで優しさを出してA.J.の緩急をつけたいという相談を受けて、衣装のコントラストができあがったんです。 それからキャラ設定とかも、「僕はA.J.としてこの作品のアクセントになりたいから、性格をすごく悪いように見せたい」とか、監督とセッションをして形になりました。とにかく刺激を受けたかったんです。いろいろなことを知りたかったし、今の自分の考えがどれぐらい海外の現場で通用するんだろうと思って。勝負に行くつもりで、いい意味でめちゃくちゃ喧嘩(けんか)したかったんですよね(笑)。『コンコルディア』が、自分の次の未来を切り拓いた気がします。