スバル「アルシオーネSVX」は時代を間違えた高級スペシャリティカー!? 333.3万円でデビュー【今日は何の日?9月16日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、スバルの高級スペシャリティカー「アルシオーネSVX」が誕生した日だ。ジウジアーロの華麗なデザインとスバル伝統のシンメトリカルAWD(高性能水平対向エンジン+フル4WD)を装備した完成度の高いスペシャリティカーだった。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・モーターファンイラストレーテッド、アルシオーネSVXのすべて ■バブル景気を背景に最新技術満載の高級スペシャリティカー スバル・アルシオーネSVXの詳しい記事を見る 1991(平成3)年9月16日、スバル(当時は富士重工業)から1985年に誕生したスバル初のスペシャリティカー「アルシオーネ」の後継、「アルシオーネSVX」がデビュー。アルシオーネをさらにパワーアップし、先進技術を採用した高級スペシャリティカーだったが、バブル崩壊の煽りを受けて販売は苦しんだ。 スバル初のスペシャリティカーのアルシオーネ アルシオーネの名は、スバルのフラッグシップに相応しいスバル六連星の中で最も輝く星“アルキオネ”に由来している。低いノーズとリトラクタブルヘッドライトを装備したウェッジシェイプの斬新なスタイリングの2ドアクーペは、大きな注目を集めた。インテリアも斬新で、航空機のコクピットのようだった。 パワートレインは、最高出力120psを発揮する1.8L直4水平対向 SOHCターボと3速ATおよび5速MTの組み合わせ。駆動方式は、リアルタイムでトルク配分を最適化する電子制御アクティブ・トルクスプリット方式のフルタイム4WD(ACT-4)が採用された。 さらに1987年には、150psの2.7L水平対向6気筒エンジンを搭載し、駆動方式は同じくフルタイム4WD(ACT-4)を組み合わせた「アルシオーネXV」が追加された。 アルシオーネは、先に販売された米国ではある程度の人気を獲得したが、斬新すぎたスタイリングは好き嫌いが分かれ、日本では絶好調のマークIIなどのハイソカーの影に埋もれて販売は振るわなかった。 アルシオーネの不振を受け、さらに高級なアルシオーネSVXを投入 1991年のこの日、“遠くへ、美しく”のキャッチコピーで、2代目となる高級スペシャリティカーのアルシオーネSVXがデビューした。SVXは、“Subaru Vehicle X”の略で、Xは最高を意味する。 スタイリングは、イタリア人デザイナーの巨匠ジウジアーロのデザインをベースに、先代の直線基調のシャープなフォルムから曲面を多用した躍動感のあるスタイリングへと生まれ変わった。さらに、ルーフを除くすべてのキャビンをガラスで覆った“ミッドフレーム・ウインドウ“で形成された開放感溢れた室内は、先代にも増して近未来的な雰囲気を感じさせた。 パワートレインは、最高出力240ps/最大トルク31.5kgmを発揮する3.3L V6水平対向DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式は先代同様アクティブ・トルクスプリット方式のフルタイム4WDだった。 スバル伝統のシンメトリカルAWD(高性能水平対向エンジン+4WD)の他にも、4センサー/チャンネルABS、4WS、SRSエアバッグなど、スバルのフラッグシップらしく多くの先進技術が盛り込まれた。 スバル最初で最後のスペシャリティカーは不発に終わる 車両価格は、標準仕様のグレードEが333.3万円、本革張りの内装の高級バージョンEが399.5万円。当時の大卒の初任給は、17.5万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では現在の価値で標準グレードEが438万円に相当する。 日産自動車「フェアレディZ 300ZX」が345万円、トヨタ「スープラ 2500GTツインターボ」が379.6万円と、ライバルと同等だったが、残念ながらブランド力や宣伝力では見劣りし、真っ向勝負しても販売面ではライバルに及ばなかったのだ。 さらに、開発時はバブル時代でも、市場に投入されたタイミングはバブル崩壊を迎えていたことも大きな目論見違いだった。脚光を浴びることなく、1996年に生産を終えた。 ・・・・・・・・ アルシオーネSVXは、魅力的なスタイリングと高性能なスバル伝統のシンメトリカルAWD、先進技術の採用と、スバルらしい高級スペシャリティカーだった。しかし、投入時にはすでにスペシャリティカーの市場は消え去っていた。5年早く登場していたら、評価は変わっていたかも。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純