【12月は年金支給月】「老齢年金から天引きされる5つのお金」とは
現在の日本において、現役を引退した後は老齢年金だけに頼って生活を送る人はとても多いです。 ◆【図表で見る】年金から天引きされる5つのお金。税金や保険料の計算方法は? 2024年に行われた国民生活基礎調査のデータでは、公的年金を受給している世帯の内、年金収入が全収入の100%を占める割合が44%となっています。 この数字からも、多くの高齢者世帯が年金収入だけに生活を頼っていることがわかります。 皆さんも、老後の生活収支を考えるために、送られてくるねんきん定期便や日本年金機構の試算ツールを使用して将来受け取る年金額を確認をする人も多いのではないでしょうか。 しかし、そこで注意が必要なのは計算された「年金額」がそのまま手元に振り込まれるわけではないことです。 年金を受給する際には、原則として年金額から税金や保険料が天引きされ、控除された後の金額が振り込まれます。今回は、老齢年金から天引きされる「5つのお金」について説明します。ぜひ参考にしてください。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
老齢年金から控除されるお金
老齢年金は、一定の年齢に達することにより国から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金の総称です。老齢年金が振り込まれる時、受給金額がそのまま手取りになるわけではなく、必要な税金や保険料が差し引かれます。 老齢年金から控除されるお金について、1つずつ解説をしていきます。 ●所得税 老齢年金から控除されるお金の1つ目が、所得税です。 所得税とは、1年間の所得金額に応じて決定する個人ごとに徴収される税金です。老齢年金収入は「雑所得」という所得に分類され、毎月の受給額から概算の所得税が計算されて源泉徴収されます。 【所得税の計算方法】 1.年金収入から健康保険料等の控除額を差し引き、課税所得を算出します。 2.算出された課税所得に税率を掛けて所得税額を決定します。 なお、税率は扶養親族などに関する申告書を年金機構に提出している場合5.105%、未提出の場合10.21%です。 ここで注意したいのが、毎月の受給額から控除されるのは概算の所得税のため、年間の税額を精算するために年金受給者は原則として確定申告が必要です。 ※一定の条件により、確定申告が不要となる場合もあります。 ●個人住民税と森林環境税 個人住民税と森林環境税も年金から天引きされます。 個人住民税は前年の所得に基づいて市町村により決定されます。課税金額の計算や税率などの詳細は自治体により異なる部分もありますが、基本的な流れは以下の通りです。 【住民税の計算方法】 1.前年の年間収入から各種控除額を引いて課税所得を算出 2.課税所得に税率(標準的には10%)を掛けて所得割額を計算し、そこに均等割額を加えて住民税額を決定 住民税は前年の収入合計を基に計算されるため、所得税の確定申告のように改めて申請などをする必要は原則としてありません。 毎年6月頃に年間の住民税額の決定通知が届くので、そこで自分自身の住民税額を確認することができます。 ●国民健康保険料 3つ目は国民健康保険料です。会社に所属をして社会保険に加入をしていない年金受給者であれば、自身で国民健康保険料に加入をする必要があります。 国民健康保険の保険料も、原則として老齢年金からの天引きです。前年の収入に基づいて計算された所得割と一律の均等割が毎月の年金額から控除されます。 保険料額の決定方法や料率は、居住地の自治体により異なります。 【健康保険料の計算方法】 1.前年の収入から控除を除いて所得を決定し、これに各種保険料率を適用して保険料の所得割を計算します。 2.計算された所得割と均等割を合算した金額が、年間の保険料として決定されます。 3.社会保険に加入をしていない同一世帯の家族がいる場合には、家族分の所得割と均等割も課税されます。 ●後期高齢者医療保険料 4つ目が、後期高齢者医療保険料です。 先ほど紹介した「国民健康保険」は75歳未満の人が対象で、75歳以上になると「後期高齢者医療保険」に切り替わります。 会社の社会保険や市町村の国民健康保険に加入をしていても、年齢到達により自動的に異動となります。後期高齢者医療保険制度の保険料も、老齢年金額から天引きされます。 後期高齢者医療保険料の計算は、各地域の広域連合により行われますが、計算の基本的な流れは国民健康保険料の決定と同様です。 【後期高齢者医療保険料の計算方法】 1.前年の収入から控除を除いて所得を決定し、これに各種保険料率を適用して保険料の所得割を計算します。 2.計算された所得割と均等割を合算した金額が、年間の保険料として決定されます。※個人単位の計算となるため、家族分が加算されることはありません。 ●介護保険料 5つ目が、介護保険料です。 介護保険料とは、国が介護保険制度を実施するために、40歳以上の全員に課される保険料です。 介護保険料は、社会保険に加入している場合は64歳まで会社の給与から天引きされ、国民健康保険に加入している場合は国民健康保険料に含まれています。65歳以降になると、社会保険に加入をしていても自身で支払う必要があります。 この介護保険料も、毎月の年金から天引きされる保険料の1つです。65歳以上の全ての人が対象となり、居住する自治体によって計算された金額が毎月の年金額から控除されます。 【介護保険料の計算方法】 1.所得額に基づいて、該当する所得段階を判定します。 2.1.の段階に応じた保険料率で、年間の介護保険料を算出します。