頼れる仲間への絶対的信頼で手繰り寄せた3戦連続の1点差勝利!大津は東福岡との接戦をモノにして2位・神戸U-18をホームで迎え撃つ大一番に挑む!
[10.20 プレミアリーグWEST第19節 東福岡高 1-2 大津高 東福岡高校グラウンド] 【写真】伊東純也ら欧州組9選手の秋冬コーデに大反響「黒髪もステキ」「これはずるい」「まじ俳優レベル」 ここまで来たら簡単な試合なんてあるはずもない。微に入り細を穿つような作戦を講じ、一泡吹かせようと全力でぶつかってくる対戦相手を、真っ向から受け止め、その上で確実にねじ伏せていく。その積み重ねで座り続けてきた首位の座を譲るつもりなんて、もちろん彼らには微塵もない。 「前期はこういう苦しい試合はあまりなかったですけど、後期になって増えている中で、もちろん失点する怖さもありますけど、みんなに対する信頼もこの1年間で相当出てきていますし、チーム全体も自信を持ってやれているのかなと思いますね」(大津高・五嶋夏生) 3試合連続での1点差勝利を飾って、次戦の大一番へ。20日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第19節で、東福岡高(福岡)と大津高(熊本)が対峙した一戦は、前半の内にMF兼松将(3年)とMF嶋本悠大(3年)のゴールで2点を先行した大津が、東福岡の反撃をMF塩崎響(3年)の1点に抑えて2-1で勝利。1週間後に行われる2位・ヴィッセル神戸U-18との決戦に向けて、弾みの付くリーグ戦4連勝を飾っている。 「ここ数試合は中盤のところで人を捕まえられて苦しんでいたので、少し配置を変えながら、調子の良い選手を出して、少しはっきりし戦い方で最初は臨もうと思っていました」。そう明かすのは大津を率いる山城朋大監督。前々節はファジアーノ岡山U-18に2-1、前節は鹿児島城西高に1-0と、際どい勝負を演じてきた中で、指揮官は左サイドハーフに今季初スタメンのFW山下虎太郎(2年)を抜擢しつつ、攻撃時の配置に少し手を入れて、この一戦に臨んでいた。 すると、早くもその狙いが奏功したのは前半11分。DF村上慶(2年)が最終ラインからドリブルで持ち上がり、DF大神優斗(3年)の左クロスはファーへ流れたものの、素早く拾ったMF舛井悠悟(3年)は「ニアが空いているのは見えた」と再びクロス。ニアで山下が潰れたこぼれを、兼松は冷静にゴールへ流し込む。「山下虎太郎が潰れてこぼれてきて、結構時間も空間もあったので『どうしよう?』という考えもあったんですけど、冷静に決められたので良かったです」。ここ数試合より高い位置でのプレーを意識していたという6番は、これでリーグ10点目。大津が1点のリードを奪う。 畳み掛ける大津。13分。今度は右サイドの高い位置でMF畑拓海(3年)が積極的なプレスでボールを奪うと、舛井は中央の状況を見極めながら、エリア外へマイナスの折り返し。走り込んだ嶋本のダイレクトシュートは、鮮やかに右スミのゴールネットを揺らす。「ちょっとボールは速かったかなと思うんですけど、アレは悠大がスーパーでした(笑)」と舛井も称賛した10番は、これでリーグ11点目。2-0。あっという間に点差が開く。 「そこまでやられたなという感じはなかったですけど、正直11番(舛井)の個の突破にやられてしまったなと思います」とキャプテンを務めるDF柴田陽仁(3年)が話した東福岡も、35分過ぎからMF大谷圭史(3年)、MF塩崎響(3年)、MF西田煌(2年)の中盤トライアングルがボールへ関わり出し、右のMF児玉愁都(3年)、左のMF神渡寿一(3年)を使った攻撃も活性化。ややホームチームが盛り返す格好で、最初の45分間は終了する。 「もう少しプレスを掛けたいなとは思っていたんですけど、崩れているわけではなかったですし、僕も言いたいことは少し抑えながら、彼らが今やれているメンタリティを優先しながら、時間を進めていった感じですね」(山城監督)「入りこそやられましたけど、そこからは結構ウチのやりたいこともできたと思います」(柴田) 後半は東福岡がボールキープする時間を増やしていく中で、「我慢勝負というか、先に失点した方が流れを持っていかれるなと考えていました」と話すキャプテンのDF五嶋夏生(3年)を中心に、大津は丁寧な対応を継続。ともに決定機を作り切れないまま、時計の針が進んでいく。 膠着状態を打ち破ったのは赤い彗星の一撃。31分。途中出場のMF稗田幹男(3年)と西田がボールを繋ぎ、右サイドを駆け上がった柴田は「もう走る時に攣りそうやって、『あ、ヤバい』となったんですけど、何とかギリギリで上げられました」と懸命のクロス。エリア内へこぼれたボールを塩崎は確実にゴールネットへ流し込む。「柴田がクロスを上げそうだったので、セカンドに回ったら自分のところにボールが転がってきて、フリーで決められました」という3年生が意地の一発。2-1。残り時間は15分あまり。会場のボルテージも一段階引き上げられる。 だが、アウェイチームは極めて冷静だった。「まだ20分ぐらい時間があって、『あと1点獲ってゲームを決定付けよう』という想いもあったんですけど、ラスト10分ぐらいからは『もう1点は厳しいかな』と思ったので、失点しないことしか考えていなかったです」(村上慶)。ベンチも交代カードを切りながら取り掛かるゲームクローズ。ピッチの選手たちの集中力も研ぎ澄まされていく。 45分は東福岡のロングスロー。右から稗田が投げ込んだボールは中央にこぼれると、FW山口倫生(2年)が厳しい体勢から懸命に叩いたシュートは、しかしクロスバーの上へ消えていく。「今までの自分たちだったら、失点して慌てて、完全に相手に流れを持っていかれる印象も自分の中にはあったんですけど、今日はそういうこともなく、最後の方は落ち着いてボールを持てたので、ここ数試合で苦しい試合を勝ってきたことが経験になっているのかなと思います」(五嶋)。大津がシビアなゲームを勝ち切って、アウェイできっちり勝点3を積み上げることに成功した。 第6節終了時から5か月近い時間を、プレミアリーグWESTの首位チームとして過ごしてきた大津。どの相手もある程度の対策を講じながら戦ってくる後半戦は、前半戦のような爆発力こそ鳴りを潜めているものの、ここまで挙げた6勝を見ても、実に4試合が1点差勝利。拮抗した接戦をモノにする力強さも間違いなく身に付けてきた。 「前期はどのチームも最初の試合でしたけど、後期になると1回当たっていて、相手も感触がわかっていると思うので、抑えるところはしっかり抑えてきて、そういうところに後期の最初の方は苦戦したんですけど、やっぱり大津高校は守備から攻撃のチームなので、守備からしっかり入るところを意識してきたことで、良いゲームができていると思います」と口にしたのは兼松。ある意味で原点に立ち返ったことで、今シーズンのチームに浮かび上がってきた新たな彩りは、戦い方の幅を広げることにも繋がっているようだ。 26日には、後半戦最初の試合として開催予定だった第10節の延期分に当たる、ヴィッセル神戸U-18とのホームゲームが控えている。中断期間を挟んで怒涛のリーグ戦9連勝を達成し、独走状態だった首位チームを猛スピードで追い掛けてきた難敵相手のビッグマッチ。もちろん大津にとってもタイトルを引き寄せる上で、キーゲームになることは言うまでもない。 両者の勝点差は7。勝利を収めれば限りなくリーグ優勝が近付く大事なゲームを目の前に、山城監督が発した言葉も印象深い。「最高の舞台ですよね。このリーグで、こういう試合を、この時期にできるということに対して、ここまで積み上げてきた自分たちの成績を誇りに思って、欲を言えばどうにか勝点を開きたいとか、言いたいことはいっぱいありますけど(笑)、やられたらまた頑張ればいいだけなので、選手権の決勝のつもりで挑みたいなとは思っています」。 頭の片隅では意識しつつ、常に一戦必勝を貫いてきた選手たちも、ようやくやってきた優勝争い直接対決に気合が入らないわけがない。「もちろんこのゲームで優勝に大きく近付くかなというのはみんな感じていると思うので、今週はいつも以上にみんなで雰囲気良くやりたいですし、いつも通り大津らしいサッカーをすれば強い相手にも勝てると思うので、自信を持っていきたいと思います」(兼松)「苦しいゲームを勝てるチームというのは本当に強いチームだと思いますし、次の神戸戦に勝てばいよいよファイナルが見えてくるという中で、城西戦も岡山戦も今日の東福岡戦も、苦しい試合を勝ち切ったことは自分たちの自信になっているので、次の試合もポジティブにやれるかなと思います」(五嶋)。彼らが紡いだ言葉には仲間への絶対的な信頼と、重ねた確かな結果から掴んできた大きな自信が滲む。 果たして進化するブルー軍団の戦士たちは、本拠地で力強くライバルの挑戦を退け、リーグの覇権の行方をより確実なものにできるのか。10月26日。COSMOS=熊本県フットボールセンター。14時にプレミアリーグWESTの大一番は幕を開ける。 (取材・文 土屋雅史)
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