「メンタル不調者は仕事できない」は大きな誤解!本人と周囲に横たわる深い溝とは
● メンタル不調者の多くが後悔 「もっと早めに相談しておけば」 これまでメンタル不調に陥るメカニズムと、陥る前に対処することの重要性についてお伝えしました。もう1つ、聞き取り調査で気になったことがあります。 それは、調査対象者のほとんどの方が「もっと早めに相談しておけばよかった」と語る点です。 メンタル不調になった多くの方は、自分が病気なのだと認識した後、「すぐには「合理的に」悩みを言えない実情「合理的に」悩みを言えない実情回復しないだろう」ということも自分で分かっているのです。だからこそ、「もっと早めに誰かに相談することができれば、自分の状況は変わっていたのではないか」と後悔していたりもします。 調査の中で、そのような想いを伺うと、悪意なくシンプルに、「では、相談すればよかったのに」などと思ってしまうのですが、一歩踏み込んで気持ちを聴くと少し印象が変わります。 それは、「相談すればよかった」と思う一方で、病気と診断された後、改めて振り返ってみても「実際には相談できなかっただろう」とも思われているのです。そのような気持ちの相剋が生じるのは、悩みの原因、理由に拠ります。
そもそも、悩みの原因や理由が、会社の関係者には相談しにくい内容なのです。具体的に挙げると、その悩みの原因や理由の多くが、家族のこと、恋愛や結婚を含めたパートナーのこと、お金関係のこと、業務の成果に関すること、社内キーパーソンとの人間関係のことなどですから、会社の関係者には相談しにくいのです。 人事労務担当者が見ている社員は、会社にいる時の個人です。個人が持つ24時間のうち、会社にいるのは8時間程度、すなわちその人の一部を見ているのです。そして、悩みの原因が会社にいる間に発生しているとは限らないのです。 残りの16時間に属する家族のこと、パートナー、お金関係のことなどのプライベートなことで悩んでいて、その影響がたまたま会社にいる時間に、症状として身体に出ているだけかもしれません。 そのような状況で、会社の関係者である上司や人事労務担当者に相談できるでしょうか。私だったら相談できないです。仮に相談したとしても、相談された方が困るのではないか、とも考えてしまいます。 加えて、業務の成果に関すること、社内キーパーソンとの人間関係のことであれば、もっと相談したくない、と考えるでしょう。それは、会社の関係者に話すことが自分の評価に影響が及ぶのではないか、その後、働きにくくなるのではないか、と想像するからです。その想いは、ちょっと怖さに似た感情のようにも感じます。