「メンタル不調者は仕事できない」は大きな誤解!本人と周囲に横たわる深い溝とは
メンタル不調による休職期間が始まると、社員は心と体の回復を目的に休息することになります。休職期間に入ったばかりの頃は、何もかもが億劫だったり、ベッドから起き上がれなかったりすることもあります。その後、徐々に回復傾向に向かい始め、少しずつやる気が出始めます。しかし、また気分が落ち込んだりすることもあります。そして、次の週には、外出できるようになったり、物事への興味関心が出てきたりすることもあるでしょう。 このように、メンタル不調者は休息を取ることで気分が晴れたり、落ち込んだりを繰り返しながら、徐々に回復に向かいます。この間に主治医と相談しながら、復職の時期を見定めていきます。 結果としてメンタル不調から回復し、業務に支障がないことの確認ができた時点で、復職となります。逆に言うと、休職期間は、「治療を行い、業務に復帰するまでの時間」として、会社側からも、ある程度妥当であると考えられている期間とも言えます。 ● 再発率の高さの背景には 「早い回復」の切迫感がある しかし、病気の治療を終え、復職した場合でも、約5割が再発し再休職に至るという調査結果(*2)もあります。この調査によれば、再発時の休職期間を比較すると、1回目は平均107日に対し、2回目は平均157日、と1.5倍長くなっている点も気に留めておく必要がありそうです。 (*2)労災疾病臨床研究事業費補助金「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」(平成28年度総括・分担研究報告書)
再発率が高い背景には、会社によって定められた休職期間中に体調を回復させなければならないという意識から、治療の進みに対する焦りが生じ、知らず知らずのうちに回復していない自分を騙しながら無理をして復帰してしまう、という現実があります。また、一時的に良くなったものの、職場環境のストレスに耐えられずに、更に酷い状態に陥ってしまったという可能性もあります。 ここまで休職に関する内容を休職者のこととして述べてきましたが、休職に関する事務作業、休職者への対応を人事労務の方が行う立場から考えると、通常業務と並行して、イレギュラーに発生する仕事としては、負担がかなり大きいことも追記しておきます。 また、私の個人的な意見になりますが、メンタル疾患に罹患したことのある社員は、たとえ元気に出社し、回復したように見えても、その時の苦しさ、辛さを心のどこかに持っているようです。 これはある意味、本人達にとっては「お守り」のようなものになります。良い意味で、自分の行動にブレーキをかけ、最悪の状態にならないように、自分の気持ちに折り合いをつけるトリガーのようなものです。そのようにして、メンタル不調から復帰した社員は、メンタル不調と付かず離れず、付き合いながら過ごしているのです。