新球団「くふうハヤテ」を指揮する元近鉄の守護神・赤堀元之がつかんだ成長の手ごたえ
今シーズン、日本野球機構(NPB)にファーム(2軍)リーグ限定で新規参戦した「くふうハヤテベンチャーズ静岡」(以下、くふうハヤテ)。同時に参戦した「オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」は独立リーグの老舗球団だったが、くふうハヤテは母体も何もない、まさしくゼロから立ち上げられたチームだ。 【写真】「永久欠番」の名監督になっていた元阪急の2番打者 開幕から約3ヵ月が過ぎた6月末、くふうハヤテに密着取材し、野球人生をかけて新球団に入団した男たちの挑戦を追った。 今回は、現役時代は近鉄バファローズの守護神として一時代を築いた指揮官の赤堀元之に、チーム現状や方向性について聞いた。(全15回連載の5回目) ■大量失点の敗戦が続くも赤堀監督は... 「(くふうハヤテ監督就任は)ありがたいお話をいただけたと思い、僕的には快諾でした。『ぜひ、よろしくお願いします』と。ゼロからスタートするチームなのでやり甲斐もある。地元(静岡)にも恩返しできるし、すごく楽しみだなと思いました」 現役時代は近鉄一筋16年間、生え抜き選手として活躍した赤堀元之は、球団消滅と同時に現役引退。そして、恩師・仰木彬監督に要請されて新生バファローズ(オリックス)の1軍投手コーチに就任した。 以降はNPB球団だけでなく、韓国プロ野球や国内独立リーグ、社会人クラブなどあらゆるカテゴリーで19年間、監督・コーチとして指導してきた。地元・静岡出身という理由を差し引いても、野球界の頂点から裾野まで知る赤堀は、ゼロから出発するチームの指揮官にはうってつけの人材といえる。 チームづくりのテーマは「育成・再生、そして勝つ」。NPB12球団にドラフト指名される選手の育成や復帰をサポートすること。しかし、それだけでは地元に愛される球団には成長できない。赤堀は監督として「選手が全力でプレーできる環境づくり」と「ファンが球場に足を運びたくなる、わくわくするような野球」をして勝利を目指すと誓い、1月25日にキャンプイン、その1ヵ月半後に迫ったシーズン開幕に向けて慌ただしく動き始めた。 「やり甲斐はある半面、NPB12球団を相手に戦っていけるのかなという不安もありました。ファームは育成の場なので、相手が若手中心でメンバーを組めば、ピッチャーが抑えれば勝利のチャンスはある。でも、それなりの選手をそろえてきたときは厳しいだろうなと。もちろん毎試合勝ちたいですが、負けを覚悟で選手を起用することも大切です。NPBの12球団入りするような選手を育てるためには、割り切りも必要だと思いました」 3月15日、ホーム「ちゅ~るスタジアム清水」での開幕戦――。 開幕戦の相手は、赤堀の古巣オリックス。歴史的な第一歩を見届けようと、球場には1631人のファンが詰めかけた。オリックス先発は宮城大弥。幸か不幸か、初陣でいきなり、前年のWBCにも出場したNPBを代表する左腕を相手に戦うことになったのだ。