アルツハイマー病やてんかんの原因、脳の過剰興奮引き起こす物質を解明 新たな治療法につながる可能性
アルツハイマー病やてんかんなど、脳の神経細胞が過剰興奮して発生する脳の疾患について、小諸市出身で山梨大医学部(山梨県中央市)の小泉修一教授(60)=医学部長、脳科学=の研究グループが過剰興奮を引き起こす原因物質を突き止めた。新薬などで原因物質の発生を抑制できれば、治療につなげられる可能性がある。研究成果は8日、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」オンライン版に掲載された。 【写真】てんかんの状態になったマウスの脳内
原因物質は、細胞内で作られて分泌されるタンパク質の一種「IGFBP2」。小泉教授によると、以前から存在は知られていたが、病気との関連は不明だった。
グループは今回、脳の生理機能維持を担う細胞「アストロサイト」に着目。直径50ミクロンほどで脳内に数千億個ある。研究では生まれつき病気で、てんかんの症状を持つマウスを遺伝子組み換え技術で作成。正常なアストロサイトを持つマウスと比較した。
結果、アストロサイトが病気の状態になることで、内部からIGFBP2が放出され、神経細胞が過剰興奮して、てんかんなどの疾患の症状が現れる―という一連のメカニズムが分かった。
今回の研究は2016年ごろに着手した。九州大(福岡市)や慶応大(東京)、東京大(同)の研究者が協力し、小泉教授は論文の共同責任著者を務めた。
小泉教授は「原因物質としてIGFBP2が見つかったことの意義は大きい」とし、この物質をコントロールできれば「病気の治療や軽減につながる」とする。うつ病や自閉症などの治療にも生かせるという。今後は「IGFBP2の放出のメカニズムを明らかにしたい」としている。