「株でもやるか」投資家マインドが変わったのはなぜ?「貯蓄から投資へ」一気に加速している納得の背景
2024年は「日本の個人投資家が変わった年」として記憶されるかもしれません。将来の暮らしに必要な資産を築くため、個人が蓄えた預貯金を有価証券への投資へシフトすることが当たり前になる世の登場です。本文では、その背景と、それを踏まえて個人投資家が何をするべきか、『投資家をつかむ IR取材対応のスキルとテクニック』著者で、IRコンサルタントの板倉正幸氏が解説します。 【この記事の他の画像を見る】 ■「貯蓄から投資へ」はいつから始まったのか?
「貯蓄から投資へ」とは、2001年4月に発足した小泉内閣が「骨太の方針」で掲げたのが始まりと言われていますが、「平成18年度年次経済財政報告」の中にスローガンではないものの、次の文章がありました。 「日本の金融システムにおける構造変化を展望する視点から、『貯蓄から投資へ』の流れが言われている。株式市場における個人投資家のプレゼンス拡大は、前向きな動きと捉えられるだろう。 しかし、キャピタルゲインを目的とする短期的な取引中心で、いわば『売買すれど保有せず』といった層も見受けられる。今後、中長期的に企業の事業成長にコミットできるような個人株主の増加が期待される」
約20年が経過した今でもこのメッセージは、古臭くなく十分に通用するのではないでしょうか。言い換えれば「貯蓄から投資へ」のスローガンは、その途中にリーマンショック(2008年)、東日本大震災(2011年)、新型コロナ感染症(2020年)などがあったにせよ実現してこなかったとも言えます。 それが、足元では投資への流れが加速して、投資が当たり前の世の中になりそうな勢いです。その背景を、乱暴ですがあえて2つにまとめると、1つは10年ほど前からの政府施策に端を発し、もうひとつは個人の投資に対するマインド変化ではないでしょうか。この2つが両輪となって貯蓄から投資への流れが形成されつつあるのです。
■「貯蓄から投資へ」後押しした3つの施策 政府による施策としては3つ挙げられます。1つは2014年に金融庁が策定した日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則)です(以下、SSC)。 イギリスのSSCをモデルにして、機関投資家が投資先企業の持続的な成長を促し、顧客・受益者の中長期的なリターン拡大を図るための7つの原則(現在は8原則)が定められました。 一番の特徴は法的拘束力がないことです。「Comply or explain」精神のもと、Comply (従う)するかどうかは(機関投資家の)自主性に委ねられ、従わないしない場合は、説明(Explain)責任を果たすことが求められます。金融庁によると、SSCの受け入れ表明をしている機関投資家は、当初120社程度でしたが、昨年末には331社まで拡大しています。