夫の食事だけ作らない妻、風俗に走る夫 死を招いた壮絶な「家庭内別居」 法廷から
理由は、「車の運転」と「クレジットカード」だった。
妻は日本の運転免許を持っていたが、ペーパードライバー。事故を起こした場合の対応が不安だったこと、自動車保険料がかかることなどから、被告は米国で運転を許可しなかった。「買い物は週末に一緒に行って買いだめすればいい」と、ドル建てのクレジットカードも持たせていなかったという。
米国は日本以上の車社会であり、買い物はクレジットカードが前提。双方を封じられた妻と被告の関係が、さらに冷え込んでいったことは想像に難くない。
「『育児放棄』『もっと金を出せ』などとののしられた」「私の分の食事は作らなくなったり、洗濯もしなくなった」「息子に私と会話させないようにしていた」。被告は、妻から数々の仕打ちを受けたと主張した。
■妻が嘔吐していても風俗嬢とLINE
被告一家は令和2年に帰国。東京都内のマンションに入居したが、この頃には家庭内別居状態だったという。
夫婦の不仲を「息子に見せたくなかった」という被告は、なるべく妻と顔を合わせないよう「2人(妻子)が起きる前に家を出て、2人が寝てから帰宅していた」
そんな生活が続く中、再び性風俗を利用するようになったという被告。検察側は、妻が事件当日、自宅で嘔吐したりする異常行動を取った際も、性風俗店の女性とLINE(ライン)でメッセージを交わしていたと指摘している。
これほど冷え切った関係でも、被告は「自分から離婚することは考えていなかった」という。「両親がそろっていることが息子のためだし、私がいなくなったら妻のイライラのはけ口が息子に向いてしまうと思った」と理由を明かした。
10月11日の公判で、検察側は「被告が妻にメタノールを摂取させたことは明らかで、犯行態様は非常に残酷」として懲役18年を求刑。弁護側は「被告を息子のもとに返してあげてほしい」と無罪を主張し、結審した。
最終意見陳述で「妻に殺意を抱いたことはないし、メタノールを摂取させたこともない。私は無実です」と、改めて潔白を訴えた被告。判決は同30日に言い渡される見通しだ。(滝口亜希)