葛飾区役所、窓口対応で生成AI活用…「たらい回し」防止へ実証実験
東京都葛飾区は12月、対話型生成AI(人工知能)「チャットGPT」の回答を窓口対応に活用するための実証実験を始める。不正確な回答も多いチャットGPTの弱点を補うため、行政関連の書籍を手掛ける出版社「ぎょうせい」(東京都)と協力して法令や財務などの資料を学習させる。経験の浅い職員でも、質の高い窓口サービスを提供できるよう目指す。
区は6月から条例や地域防災計画など区に関する資料をデータベース(DB)化し、チャットGPTに読み込ませる独自のシステムの運用を開始。庁内で利用する資料作成に活用している。実験は、このシステムを窓口業務にも生かそうと計画された。
年度末までに、同社が出版する法令関連のデータなど、窓口での問い合わせ対応に必要な資料をDBに追加してチャットGPTに読み込ませ、どのような質問をすれば実務に生かせる回答が得られるのかを精査する。将来的には、窓口で区民から戸籍や税金などに関する相談を受けた際、チャットGPTにその内容を入力し、得られた回答を参考にしながら対応できるようにしたい考えだ。
区では近年、団塊世代の職員が一斉退職して若手が増え、相談業務のノウハウの継承が課題になっている。詳しい職員がいないなどの理由から区民の相談が「たらい回し」になるケースもあり、AIの活用でサービスの維持・向上につなげる狙いがある。
福島啓介・DX推進担当部長は「AIに対する質問内容によっては十分な回答が得られないケースも想定され、あくまで判断するのは人間というのが大前提。回答をうのみにするのではなく、正しい情報かどうかを判断する職員の能力向上にも併せて取り組む」とする。
生成AIに詳しい国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、「間違いなど生成AIの問題を人間が補完できれば、他の自治体の参考にもなるのではないか」と指摘した。