錦織圭が初めて語ったイップスとの戦い「大事なポイントが取れない。なぜかすぐミスする」
【イップスの症状は3年ほど前から】 ── 自身がイップスになった時に教わったことを、橘選手にも教えていたようですね。そのような自分の経験が指導に活きると感じましたか? 「たしかに、そういうところはありましたね。特に僕の場合、車いすの打ち方が技術的にわからない。教え方が難しいということもあったので、考え方のテクニックのようなものを伝えました。 ショットが入らないときに僕がやっているのは、あんまり遠くのターゲットに集中しすぎず、もうちょっと手前から狙っていくこと。大事なポイントでラケットが振れなくなった時にも、そういう負の連鎖を断ち切る・悪い思いを打ち消すために、ふだんと違うことを考えるという意味でやっていましたね」 ※ ※ ※ ※ ※ そのような助言をジュニアにしつつも、「リスク回避」の策を取ったのはイップスの症状が悪かったからであり、誰にでも当てはまるわけではないとも加える。また、「近いところを狙う」のも「ボールをコートに入れにいく」ことではない。「大切なのは、大事な時ほど腕を振り抜くこと」だとも、錦織は強調した。 なお、念のため錦織本人に、このイップスの件を記事に書くのは構わないかと問うと、「もう今は治ったので、大丈夫です」とのこと。ただ、ケガから完全復活に至るまでのプロセスでは、度々そのような症状に襲われたのだと明かした。 前述してきたように今回、錦織は国枝氏と並んでジュニアたちの指導にあたった。国枝氏がジュニアに伝える言葉の一つひとつにうなずき、「それ、いいですね」「僕もやってみよう」と感嘆の声を漏らしてもいた。 ※ ※ ※ ※ ※ ── 国枝さんの話を聞き、印象に残ったことや、新たな学びはありましたか? 「いやー、どれもタメになりました。タメにはなったんですが、なんかこの......やっぱり、それぞれ人によって考え方がすごく違うんだなっていうのも再認識させられたというか。 みんな性格も違いますし、慎吾さんの言葉はもちろん全部ズバッときたんですけど、それを僕がやって成功するかっていうと、またそうではないし。自分に合ったやり方を見つけないといけないということは、あらためて感じましたね。 でも何か、慎吾さんと自分の考え方の近さは感じました。やっぱり、自分の言葉とか態度で脳を麻痺させるというか、暗示をかけるというか。そういうところは大事だし、ひとつテクニックとしてあるんだな、というのは感じましたね」