102歳で亡くなった世界最高齢のスタイル・アイコン、アイリス・アプフェルの生涯
アプフェルは生涯を通じて世界中を旅し、各地の蚤の市を熱心に巡ってインスピレーションを得ながら、ファッションや家具、ジュエリー、アンティーク、アクセサリーを収集。そこで手に入れた戦利品はエスティローダー(Estée Lauder)やグレタ・ガルボ(Greta Garbo)といった著名人の自宅も彩ってきた。揺るぎない好奇心や想像力、そして誰にも真似できない表現力を持つアプフェルは、大胆な色合いやパターン、テクスチャー、そして主張の強い表現にこだわり続けた。2012年の米「WWD」のインタビューには「私は色彩人間。色に関して無難な表現に甘んじることはない」と語っていた。
大きめの眼鏡、赤い口紅、短く刈り上げたグレーヘアをトレードマークに、アプフェルのファッション・アイコンとしての地位は、年を追うごとに開花していくかのようだった。それは自身の生誕100周年を記念して「H&M」と発表したカプセルコレクションのほか、ジュエリーからアイウエア、ハンドバッグ、「メイシーズ(MACY’S)」などの小売店との協業、そしてアプフェルがスタイリングを手がけたバービー人形など、多岐にわたるコラボレーションを見ても明らか。事実、アプフェルは毎シーズンのようにコラボレーションや広告キャンペーンを発表してきた。18年の米「WWD」のインタビューには「私はとても忙しくて、まるでクレージーな人間。仕事が好きなの」と答えていたが、それは彼女が夫のカールを亡くしてからより顕著になったようだ。「私たちは一緒にビジネスをしていたし、すべてにおいて一緒だったから、喪失感はとてつもなく大きかった。自分の正気を保つために仕事をした。」とも語っている。
90歳を過ぎてブレイクのアプフェルに
トミー・ヒルフィガーらもお悔やみ
何十年もの間広く認知されてきたにもかかわらず、アプフェルは「とてもプライベートな人」であり続け、90代を超えてから得た名声に慣れるのにはある程度の時間を要したという。アプフェルは19年、ニューヨークに拠点を置くマネジメント会社IMGと契約。当時97歳だったアプフェルは米「WWD」に「とても興奮しています。私はきちんとしたエージェントを持ったことがありませんでした」と語った。それ以前は全て自分自身で仕事をこなしていたという。アプフェルは「私は『自分でやる』女。自分の人生がこんな風になるなんて想像もしていなかったから、準備もしませんでした。でもトミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)は『それではダメだ』と言って、IMGを紹介してくれた。とても興奮しているし、とても感謝しています」と19年に語っていた。