102歳で亡くなった世界最高齢のスタイル・アイコン、アイリス・アプフェルの生涯
彼女の人気に火をつけたのは、05年にニューヨークのメトロポリタン美術館で開かれた、多彩な服やジュエリーを紹介した展覧会「稀代の人:アイリス・アプフェルのコレクションから(Rara Avis:"Selections from the Iris Apfel Collection)」だった。デザイナーではない存命の人物の服やアクセサリーが展示されたのは、コスチューム・インスティテュートでは初めて。この展覧会をきっかけに、彼女は世間の注目をさらに集めていく。
アルバート・メイスルズ(Albert Maysles)監督による15年のドキュメンタリー映画「アイリス」では主役として取り上げられ、17年にアメリカのケーブルテレビ放送局HBOで初公開されたドキュメンタリー「(訃報に自分の名前がないのなら、朝食を食べよ)(If You're Not in the Obit, Eat Breakfast)」にも登場。94歳で「ポケット・アイリスの知恵: アイリス・アプフェルの名言集(Pocket Iris Wisdom: Witty Quotes and Wise Words From Iris Apfel)」を執筆し、その数年後には、さまざまなつぶやき、写真、イラストが収められているもう1冊の本「偶然のアイコン、老年スターのつぶやき(Iris Apfel:Accidental Icon, Musings of a Geriatric Starlet)」を出版した。
アプフェルの母サディエ・アソフスキー(Sadye Asofsky)は、ロシアで生まれ、オレゴン州のアストリアで育ち、ファッション・ブティックを経営していた。父サミュエル・バレル(Samuel Barrel)は鏡とガラスを専門とする起業家だった。アプフェルの冒険心は、クイーンズからマンハッタンへの地下鉄の道のりに端を発している。彼女はその道程でグリニッジ・ヴィレッジ、チャイナタウン、ハーレムなどのリサイクルショップ、アンティークショップ、フリーマーケットなどを巡っていたのだ。ニューヨーク大学に入学した後、ウィスコンシン大学に編入。博物館管理学のコースを取り、アメリカのジャズを学期論文のテーマに選んだ。ウィスコンシン大学同窓会によると、アプフェルは図書館でジャズに関する本を見つけることができず、シカゴに行き、生涯の友人となったデューク・エリントン(Duke Ellington)を含む一流のジャズ・ミュージシャンにインタビューをしたという。