『アナと雪の女王2』エルサとアナが見つめる“本当の自分” 2027年公開の第3作はいかに?
前作にも匹敵する力強い楽曲の数々
『アナと雪の女王2』では、前作に引き続きクリストフ・ベックが音楽を担当。また名曲「レット・イット・ゴー」を生み出したロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペス夫妻も参加しており、数多くの楽曲を手掛けている。 どれも粒ぞろいの楽曲のなか、主題歌「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」はまさに「レット・イット・ゴー」に匹敵する名曲だ。不思議な声に導かれてエルサが歌うこの曲は、彼女の心が外へ向かって開かれていくのを感じさせる。「レット・イット・ゴー」が自分のなかにあったものを解放する歌だったのに対し、「イントゥ・ジ・アンノウン」では、なにか大きな力に突き動かされ、まだ見ぬ世界に飛び込んでいく彼女ののびのびとした気持ちが歌われている。以前は自分のなかにあるものに怯えていたエルサだったが、恐れを手放し、“ありのまま”の自分を受け入れ、愛する人を救ったことで自信を持てるようになったのだろう。また3年という女王としての期間に、自己肯定感も育まれていったのかもしれない。「イントゥ・ジ・アンノウン」と「レット・イット・ゴー」では同じように歌声は伸びやかに響くが、そこには大きな違いがある。抑圧されていた思いが外へ向かって解放される「レット・イット・ゴー」と、未知の世界へ自ら踏み出そうという「イントゥ・ジ・アンノウン」では、解放の規模が違うのだ。そしてエルサは、“本当の自分”を探す冒険へと旅立つ。 しかし本作で最も注目してほしい楽曲は、クリストフが歌う「恋の迷い子」だ。クリストフ役は原語版ではトニー賞ミュージカル主演男優賞にノミネートされたこともあるジョナサン・グロフが演じているが、残念ながら前作では彼がしっかりと歌うシーンはなかった。そして待望のソロ曲として登場したのがこの「恋の迷い子」なのだ。この曲では、アナの自立性を認めつつ、彼女に追いつけないクリストフの寂しさや悲しみが歌われている。彼はこれまでのディズニー作品の王子たちとは違い、等身大の男性として描かれているのが特徴だ。恋に迷うこともあり、自身の不甲斐なさ、アナとの距離に戸惑うこともある。ロックバラード調のこの曲では、有名作品のパロディも含めたミュージックビデオふう風の映像も楽しい。日本語吹替版では、劇団四季出身の原慎一郎がクリストフの繊細な思いを見事に歌い上げている。 これらの楽曲は、すでに前作でキャラクターの背景がきちんと描かれているからこそ、くっきりとその輪郭を浮かび上がらせ、輝いている。 『アナと雪の女王』シリーズは、2027年に第3作が公開されることが発表されている。さらに公開時期は未定だが、4作目の製作も発表された。これまでキャラクターたちのアイデンティティを探求してきた本シリーズは、これからどこへ向かうのだろうか。