今年度の小学生No.1スケーターは永原依弦! Flake Cup 2023-2024 Championship
無冠の帝王が初の栄冠
その答えは、優勝した永原依弦の滑りに詰まっている。 なぜ彼は90.40ptと、三浦宴をわずかながら上回ることができたのか!? それは彼のトリックの繋ぎ方、ルーティーンの流れにあるといえる。 もちろんトリック単体を見てもキックフリップ・バックサイドノーズブラントリバートをラストに織り込むなど難易度も申し分なかったのだが、それ以上に澱みないスムーズな動きに目を奪われてしまうのだ。 両腕がほとんど上がらないエアーに加え、バックサイドキックフリップ・ディザスターなどのリップトリックも、ボトムを掛けてから一呼吸おくことなく抜けていくので、テンポが非常に早い。 しかも着地でスピードが落ちることもないので、実に無駄がなく、いい意味で彼の滑りはものすごく簡単そうに見えてしまうのだ。
その点で言えば、三浦宴はトリックの難易度では決して負けていなかったのだが、永原依弦のフロウと見比べると、わずかながらトリック後のコンマ1秒の動作の遅れが見受けられたか。本当に細かなところではあるが、そこを見抜いたジャッジ陣は流石というべきだろうし、小4という年齢を鑑みても、更なる成長へ向けた無言のメッセージでもあったのではないかと思う。 こういった部分を、スケートボードの世界ではよく”スタイル”という言葉で表現するのだが、そこが優勝を左右することになったのは、非常に興味深い部分であったかと思う。言い方を変えるなら、トリックばかりに偏重しがちな現在のキッズスケートシーンに一石を投じる良い機会になったのではないだろうか。そんなチャンピオンシップだった。 ではここでまた話を優勝した永原依弦に戻そう。実は彼のこの一年は決して順風満帆ではなかった。大分のスーパー小学生クラスと中部大会のジュニア大会では本来の実力を発揮しきれず、共に9位に終わるなど苦杯を舐めていた中で、今大会はワイルドカードからの出場だった。 そこを見事に1位通過すると、チャンピオンシップでも並み居る猛者達を捲し立て、直線一気のごぼう抜きでようやく勝ち取ることができた栄冠だったのだ。現パークスタイル日本チャンピオンの永原悠路を兄にもつサラブレッドで、スキルも十二分に兼ね備えていることから、周囲からの期待もあったことだろう。だがなかなか結果がついて来ず、「無冠の帝王」とまで呼ばれていた逸材がようやく目を覚ました瞬間だった。 そこには小学生以下という年齢制限が、よりドラマ性を色濃くしていたのではないだろうか。