重複した物価高対策でバラマキ感が高まる経済対策議論
物価高対策は生活弱者に絞る一方、為替の安定確保を
衆院選で政治情勢が変化したとはいえ、経済政策は効果と副作用を慎重に比較考量し、費用対効果の高いものとすることに最大限務めるべきである点は変わらないはずだ。 給付金、補助金、減税では、個人の実質所得の増加率に与える影響は一時的であり、中長期的に所得増加率が高まり、生活が改善していくとの期待を高める施策とは言えないだろう。 経済政策は、日本経済の潜在力を高める成長戦略、構造改革を中心に据えるべきであり、物価高対策は、低所得者など物価高の打撃を特に大きく受ける生活弱者に絞った社会政策と位置付けるべきだ。ただし、成長戦略は、補正予算ではなく本予算で講じるべきである。 ちなみに、為替の安定こそが物価の安定に大きく貢献することから、政府と日本銀行が連携して、過度な円安阻止に取り組むことは重要なことだろう。この点から、日本銀行の利上げを妨げることは、過度な円安修正の妨げとなり、物価高問題をより深刻にしてしまう可能性があることに留意すべきだ。 【参考資料】 「経済対策、低所得者に給付金 電気・ガス補助再開へ」、2024年11月8日、日本経済新聞電子版 「半導体投資で賃上げ定着 経産相、経済対策で重点支援」、2024年11月8日、日本経済新聞電子版 「「物価高克服へ原発活用」 経済対策案、22日にも決定」、2024年11月9日、産経新聞 「政府の経済対策案*電気・ガス代補助再開*低所得世帯に給付金*原発「最大限に活用」」、2024年11月9日、北海道新聞 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英