重複した物価高対策でバラマキ感が高まる経済対策議論
衆院選挙後の政治情勢の変化を受けて経済対策の規模はさらに膨らむ方向か
昨年策定された経済対策では、財源の裏付けとなる2023年度補正予算の規模は、一般会計で13.1兆円だった。石破首相はこれを上回る規模の経済対策を実施する考えを示していた。 しかし、衆院選で与党が大敗し、国民民主党を中心に野党の意見を取り入れる中、その規模はさらに大きくなる可能性が高まっている。そして、中長期的な日本経済の成長力の強化につながる政策よりも、短期的に国民受けするような給付金、補助金、減税が中心の「バラマキ」的な性格が強まることが懸念される。 昨年の経済対策では、年末に期限を迎える電気・ガス代とガソリン価格への補助金を今年4月まで延長する施策が盛り込まれたが、その予算規模は1兆1,600億円程度だった。今回も同様の措置が実施されそうだ。また昨年の経済対策では、定額減税と給付金の合計額は5兆1,000億円程度にも達した。 与党が国民民主党の103万円の壁対策案をそのまま受け入れる場合には、7.6兆円程度の規模になるとみられる。また、国民民主党の求めるトリガー条項の凍結解除は、国と地方の税収を1.5兆円程度減らすことになる。
物価高対策は重複が著しいのではないか
ガソリン補助金や電気・ガス代支援には、今まで累計で11兆円超の予算が充てられてきた。それらを延長すればさらに予算は積み増しされ、しかも出口はなお見えない。この施策は、財政負担が大きいばかりでなく、価格メカニズムを歪めてしまうことや、脱炭素や省エネの取り組みに逆行するという大きな問題を抱えている。 物価高対策は、物価高によって特に打撃を受ける低所得者などに限ったものにすべきだ。そうすれば、財政負担は軽減される一方、上記のような問題も大きくならない。しかし実際には、所得制限を設けない形でのガソリン補助金や電気・ガス代支援の延長、トリガー条項の凍結解除が検討される方向だ。また、国民民主党が提案する103万円の壁対策も、高額所得者まで恩恵が及ぶものだ。 これらは物価高対策の名のもとに、多くの政策を重ねて実施する、重複が著しい政策のパッケージだ。これこそが、バラマキ的政策ではないか。