寝ても寝ても倦怠感が消えない。それ、もしかしたら〈うつ〉が原因かも?臨床心理士が解説
倦怠感とは、「だるい」「しんどい」「疲れた」といった感覚を抱くこと。通常であれば、しっかり休息をとれば倦怠感は消えていきます。ところが、寝ても寝ても倦怠感が消えないことも。この場合、「うつ」が原因かもしれません。今回は、消えない倦怠感とうつについて解説します。 〈写真〉寝ても寝ても倦怠感が消えない。それ、もしかしたら〈うつ〉が原因かも?臨床心理士が解説 ■寝ても寝ても倦怠感が消えないのはなぜ? 寝ても消えない倦怠感は、うつが生み出す脳の疲れが原因かもしれません。 ■■消えない倦怠感はうつが原因かも うつと聞くと、気持ちの落ち込みをはじめとする心の症状がイメージされがちですが、実際のうつは、倦怠感などの身体的な症状から始まるケースがほとんど。 以前は当たり前にできていた家事や仕事で「しんどい」「だるい」と感じることが増えているなら、うつの可能性を考えてみましょう。 ■■うつの倦怠感は「脳」の疲れ うつによる倦怠感は、「身体の疲れ」と誤解されがちです。しかし、実際には「脳の疲れ」によるものです。 仕事や人間関係などでストレスがかかり続けると、脳が活発に働くと同時に、「活性酸素」が生み出されます。この「活性酸素」が一定量を超えると、私たちは疲れやだるさを感じるのです。 つまり、うつによる倦怠感では、「脳を休めて活性酸素を減らす」ことを意識する必要があります。効果的なのは「睡眠」ですが、脳が疲れていると、寝ているつもりでも深い眠りに入れないことがあります。 疲れている脳を休めたくても、脳が疲れているからこそ休めないという状態にあるため、うつの倦怠感は長く続く傾向があります。 ■■脳が疲れをごまかせない 疲れは溜まっていても、仕事や育児で「これだけは頑張らなきゃ」というタスクを前にすると、意外と動けた…という体験はありませんか?これは、脳が一時的に疲れをごまかす物質を分泌してくれているから。 しかし、脳が疲れると倦怠感をごまかす物質も分泌できなくなり、「やらなければいけないとわかっているのに、だるくてできない」ということが増えてきます。 ■「うつかも?」と思ったらチェック 「うつかも?」と悩む方のために、うつ病チェックリストをご用意しました。 身体・心理・行動の症状がチェックできます。該当するものが多いほど、うつの可能性が高くなります。 ※このチェックリストは、簡易抑うつ症状尺度(QID-J)を参考にしています。 ■■身体面の症状 【睡眠】 □寝つきが悪い:寝つくまでに30分以上かかる □夜中に目が覚める □早朝に目が覚める:起きるべき時間の30分~1時間前に目が覚める □眠りすぎる:10時間以上眠っている 【食欲】 □食欲が低下する:食べる量や回数が減った □食欲が増進する:普段よりたくさん食べなければいけないと感じる □体重の減少:2週間で1kgもしくは2㎏以上減った □体重の増加:2週間で1kgもしくは2㎏以上増えた ■■心理面の症状 □悲しい気持ちを感じる時間が増えた □自分のダメなところを責め続けている □死や自殺について考えることが増えた ■■行動面の症状 【注意・集中】 □集中したり、決断したりするのが難しい □そわそわと落ち着かず、動きたい衝動がある 【動きが遅い】 □当たり前に行っていた家事や仕事をこなすのに大きな努力が必要 □頭の回転が遅く、質問に答えるためにいつも以上のエネルギーが必要 ■うつの倦怠感への対処法 ここからは、うつによる倦怠感が続くときの対処法をご紹介します。 ■■まずは休んでぼーっとしてみる 脳が疲れている場合、とにかく「なにもしたくない」「横になっていたい」などと感じているはずです。その心の声のままに、とことん休んでみましょう。 「何もしないなんて耐えられない!」という方は、好きな映画を視聴したり、ゲームをしたりと「疲れたらいつ休んでもいい活動」をやってみてください。 ■■退屈になったら活動の幅を広げる 「何もしたくない」から「退屈だなぁ」と思えるようになったら、外を散歩してみましょう。無理せずに「気持ちいい」と思える範囲でチャレンジします。 平気な方は、図書館やスーパーなど、騒がしさの少ない場所に出かけてみてもOK。安心できる友達と会うのも良いでしょう。ストレスが低い環境で脳を働かせる練習をします。いわばリハビリです。 なお、ショッピングセンターやゲームセンターなどの騒がしい場所は、脳への負担が大きいかもしれません。一見、回復したように感じても、倦怠感がすっきり消えるまでは脳の疲れは取れていないのです。油断禁物です。 ■■改善しなければ病院へ行く 自分なりに休息をとっても倦怠感が抜けない場合は、病院を受診してみましょう。倦怠感の根本的な原因であるうつを治療すれば、倦怠感はほかの症状とともに解消されます。 また、「うつ病だと思っていたら、身体的な疾患が隠れていた!」ということもあります。例えば、高血圧などの身体疾患が、うつを引き起こすこともあるのです。この場合、身体疾患に対する適切な治療によって、倦怠感の症状が和らぐ可能性があります。 ■参考文献 ・浅井逸郎[監修](2020)心のお医者さんに聞いてみよう「うつ病の夫」に妻がすべきこと、してはいけないこと 抜け出すための“寄り添い方”がわかる本 大和出版 ・福田真也(2019)働く人のこころのケア・ガイドブック 会社を休むときのQ&A 金剛出版 ・杉浦こころのクリニック「疲労、全身倦怠感(体がだるい、重い、疲れがとれない)」 ・名古屋ハートセンター「“休養不足”に陥っていませんか?心臓を長持ちさせるための休養とは」 ライター/佐藤セイ(臨床心理士)
佐藤セイ