タワマン、将来の「廃墟化」懸念 有識者会議が非居住者への税負担などを提言 神戸市
神戸市の有識者会議は8日、タワーマンションの課題と対応策に関する報告書(暫定版)を取りまとめ、市に提出した。管理状況の市への届け出義務化や住んでいない所有者への課税などを提言し、将来的に修繕や解体の合意形成が困難になる可能性があるとして「廃墟(はいきょ)化」の恐れにも言及した。年度内に最終報告書を取りまとめる方針。 東京や大阪など都心部を中心に人気のタワーマンションは、神戸市内に計64棟あるが、市は令和2年に三宮などの中心部の商業地への大規模マンションの新規建設を規制する条例を制定。都心の住宅地化を防ぎ、商業施設やオフィスの誘致を進めて、就業人口の増加を図ってきた。 報告書によると、市内のタワーマンションでは住民登録のない割合は全体の16・6%。1~9階の低層階は所有者が実際に居住する割合は64%だったが、40階以上の高層階では所有者が居住していない割合が58%に上り、市外に住むケースも多かった。 有識者会議では、優先して取り組むべき事項として、マンション管理▽災害対応▽非居住対応▽バランスが取れた都心のまちづくり▽終末期への対応-の5項目に分けて整理。修繕積立金の引き上げなどの合意形成がより困難になることが想定され、まずは行政が管理状況を把握するために、現状は任意の届け出の義務化の検討を提言した。 非居住者に対しては、独自の法定外税の創設によって追加の経済的負担を求め、税収はマンション管理行政や防災、まちづくりなどに活用することを提案した。仮に廃墟化すれば、行政が代執行手続きで解体することも考えられるが、「費用の回収は不可能に近い」とも指摘した。 この日の報告書の手交式で、座長を務めた関西学院大の上村敏之教授(財政学)が「大規模マンションの課題を次世代に先送りすることなく対応していただきたい」と求め、久元喜造市長は「全国に先駆けて問題に対処したい」と応じた。