同性婚合法化から10年、「変化する英国」の現在地 いじめや差別乗り越え…「自分らしく生きられる人が増えてほしい」
英国ではかつて男性同士の性行為が違法とされ、同性愛者は迫害や差別に長年苦しめられてきた。1982年までには全土で同性愛行為が合法となったが、エイズの流行が偏見に拍車をかけた。同性愛者は憎悪の標的となり、ゲイが集まるパブで爆弾テロも起きた。 同性愛者として知られる英国の数学者アラン・チューリング。第2次大戦時にドイツ軍の暗号解読で中心的役割を果たしたが、1952年に同性愛行為を理由に有罪になった。 1967年にイングランドとウェールズ、1980年にスコットランド、1982年には北アイルランドで21歳以上の男性同士の性行為が非犯罪化され、チューリングを含め有罪のまま亡くなった多くの人たちは後に恩赦された。 1980年代に性的少数者の権利を訴える運動が活発化する中、エイズが流行した。同性愛者らは死の恐怖だけでなく激しい誹謗中傷にもさいなまれた。1999年にはロンドンのゲイパブで爆弾が爆発、多数が死傷する惨事も起きた。
2000年代に、同性カップルに婚姻とほぼ同等の権利と責任を与えるシビルパートナーシップ制度が導入された。2013年にイングランドとウェールズで同性婚を認める法律が成立し、後に全土に拡大。歌手エルトン・ジョンさんも2014年、同性パートナーと正式に結婚した。 英国国教会も2023年、同性カップルを「祝福」することを認める方針を発表した。ただ、結婚は「一組の男女間のもの」という定義は維持し、同性カップルが英国国教会の教会で結婚することはできないままだ。