同性婚合法化から10年、「変化する英国」の現在地 いじめや差別乗り越え…「自分らしく生きられる人が増えてほしい」
子どもの時から「男女に分けられ、自分をそこに当てはめるのが苦痛で。自分の中のもやもやした思いを表現する言葉がなく、言語化できなかった時期が一番苦しかった」というKanさん。ジェンダー規範への違和感が強く「そういう環境から逃れたかった」。 ゲイであることを両親にカミングアウトしたのは高校2年の時だった。自分のセクシュアリティーについて悩んでいたが、「当時は社会が変わるという発想は全くなく、自分がおかしいと思っていた」。両親は「KanはKanだから大丈夫だよ」と言ってくれ、ほっとした。 ▽「選択肢なく」離れた日本 英国の大学院に留学していた2016年にトムさんと出会い、交際が始まった。帰国後、3年間の遠距離恋愛を経て2021年に英国で結婚。今はロンドンで暮らしている。 英国では「同性婚を理由に嫌な思いをしたことは今のところ一度もない」という。日本は性的少数者への理解が遅れ、先進7カ国(G7)の中で唯一、性的指向や性自認に基づく差別を禁じる国レベルの法令もないが「パートナーシップ制度の導入が増えてきたのは前向きな動き。自分たちの存在を認めてもらえるのはうれしい」と評価する。ただ「制度があるから法律がなくていいという考えは違う」ともくぎを刺した。
家族や友達と離れて英国で生活するのは簡単なことではないが、日本では同性婚が認められず、選択肢がなかった。将来的に日本で暮らすことも考えるが「トムの配偶者ビザが下りない状況では日本で結婚生活ができない。自分の人生や将来について主体性が持てないのがもどかしく、悔しい。責任を持たせてほしい」と訴える。 日本の各種世論調査でも同性婚への賛成が7割を超え、社会は変わりつつある。「ゲイやレズビアンは『エンタメ』として消費されてきたが、この10年で『社会問題』となってきたのは大きな変化だ」とKanさんは歓迎する。法律も変わると信じて発信を続けているが「困っている人が放置されたままになっている。数年後ではなく、今、法律を変えてほしい」と強調した。 英国でも婚姻の平等を勝ち取るまでには長い闘争の歴史があった。「英国は学んで、変化している。『日本はどうですか』って、僕は問いたい」 ▽迫害や差別、偏見の苦悩