認知症の発症リスクが2倍近くなる? 「認知的フレイル」の状態について作業療法士に聞く
認知的フレイルが与える影響
編集部: 認知的フレイルが、認知症リスクに与える影響について教えてください。 赤井田さん: 認知的フレイルを有する人は有さない人に比べ、認知症の発症リスクが高いといわれています。そのメカニズムとして、身体機能に関連する筋肉には身体の小さな血管の大部分が含まれており、血液の流れを効果的に増加させる能力を有しています。 つまり、筋肉量が少なくなってくると血液の流れが弱くなり、脳の機能にも影響が及び、認知機能の低下につながる可能性があります。これらのことは、認知的フレイルが認知症リスクに与える影響のひとつとして考えられます。 編集部: 認知的フレイルは身体機能にどのような影響を与えるのでしょうか? 赤井田さん: 認知的フレイルの影響により転倒のリスクが増加することが挙げられます。 認知的フレイルを有する者は、歩行時にバランスを取るために必要な下肢の筋力や体幹の筋力が低下していること、さらに認知機能で注意力や情報処理能力が低下していることから、日常生活において転倒が発生しやすい状況にあります。 さらに、日常的な活動性も低く、認知的フレイルを有する者は、健常な高齢者に比べ死亡リスクが2倍近く高いことが報告されています。 編集部: 認知的フレイルのサインや早期発見のコツはありますか? 赤井田さん: 認知的フレイルは身体機能の低下および認知機能の低下を併存する特徴から、それぞれの機能低下のサインを早期に捉えることが予防における重要な視点です。 具体的には、「歩くのが遅くなってきた」「疲れやすく活動量が減ってきた」など、身体機能が衰えてきた可能性を見逃さないことが重要です。さらに、認知機能低下の早期発見には、日常生活における、物忘れを自覚することが挙げられます。 具体的には、電話の扱いや買い物、料理、薬の管理などの日常生活上で些細な誤りが生じるようになってきた場合や、身近な方から見て違和感を覚える場合は認知機能が衰えてきている可能性があります。 日常生活における些細な変化を見逃さないことが認知的フレイルを早期発見するポイントです。