【年金月額17万円、70歳】賃貸アパートの立ち退きを迫られるも、転居先決まらず…背景に、不動産会社「孤独死による事故物件化懸念」約4割の現実
マスコミでもしばしば報道されている、高齢者の住宅難民化の問題。それなりの年金を受給していても、預貯金があっても、なかなか状況は厳しいようだ。実情を見ていく。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
70代バツイチ男性、老朽化アパートの立ち退きを求められ…
江戸川区在住の70歳のバツイチ男性は、築40年超のアパートへ20年にわたって居住していた。最寄駅からやや離れた立地だったが、格安で気に入っていたという。しかし、ここ数年で空き部屋が目立ちはじめ、ついには男性以外の入居者が退去。そのタイミングでオーナーが代替わりし、老朽化による取り壊しを理由に、男性は立ち退きを迫られている。 「嫁と別れてから、ずっとここに住んでいました」 「まあ、老朽化して危険だという話だから、出て行かなきゃね。確かにボロボロだよね」 ところが、次の住まいが見つからない。 男性は一般企業を定年まで勤めあげた元サラリーマンで、年金は17万円。貯金もそれなりにあるという。 「どうしたらいいんだろうね、来月末には出て行かなきゃいけないが…」 男性は途方に暮れている。
不動産会社から、年齢を理由に入居を断られた人、26.8%
株式会社R65が実施した『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題に関する実態調査』によると、65歳を超えて賃貸住宅の部屋探しを経験した高齢者は35.7%だった。 理由は「家賃の低い物件に住み替えるため」が36.6%、「適切な広さの間取りに住み替えるため」が32.2%、「子どもの近所に住み替えるため」が10.8%だった。一方で、「オーナーや不動産会社から立ち退きを促されたため」というケースも7.6%あった。 不動産会社から年齢を理由に入居を断られた経験について尋ねると、「ある」と回答した人は26.8%。断られた回数は「1回」が最多で44.8%だが、「5回以上」というケースも11.9%あった。 断られた人を収入別にみると、「年収200万円未満」が27.7%、「年収200万円以上」が26.4%となり、あまり大きな差はみられないように見受けられ、このことから、部屋の借りづらさは年齢がネックになっていることがわかる。 念のため、厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』から、現在の高齢者の年金受給状況をみてみよう。 厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて14万4,982円。65歳以上の受給権者の平均年金月額は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円となっている。 男性の平均的な年金額は月17万円弱、手取りは14.2万~15.0万円程度だ。決して高額ではないものの、年金は必ず決まったタイミングで、決まった金額が振り込まれるのだが、それでも高齢者が家を借りるのは簡単ではない。