全国盛り土総点検、1375カ所で何らかの問題 有識者会議「全国一律の法制度を」
今年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害を受けて、夏ごろから進められていた全国の盛り土の総点検について、これまでに1375カ所で、許可・届け出などの手続きがとられていなかったり、廃棄物の投棄が確認されたなど何らかの問題があることが明らかになった。20日に開かれた有識者による「盛土による災害の防止に関する検討会」(座長=中井検裕・東京工業大学教授)の中で示された。有識者検討会はこの日、「危険な盛り土造成などを規制するための全国一律のルール(新たな法制度)を創設し、規制を強化していくべき」などとする提言をまとめた。 崩れたのは人為的に埋めた部分だけ 熱海土石流 静岡大教授・現地調査 静岡県によると、今年7月3日、熱海市伊豆山地区の逢初川の最上流部(海岸から約2キロ上流、標高390メートル)から、川に沿って土石流が流れ落ち、死者26人、行方不明者1人の人的被害が出た。この災害については、最上流部にあった盛り土の崩落が、被害の甚大化につながったとされている。 こうした中、国土交通省、農林水産省、林野庁、環境省が連名で、都道府県に対して総点検作業を行うよう通知して始まった。点検項目は(1)許可・届け出など必要な手続きが行われているか(2)手続き内容と現地の状況が一致しているか(面積、土量など)(3)災害防止の必要な措置がとられているか(水抜きの有無など)(4)禁止事項に関する確認(廃棄物の有無など)――の4項目。 調査対象は、土砂災害警戒区域(土石流)の上流の地域や大規模盛り土造成地など全国3万6226カ所で、このうち約8割の2万8152カ所で目視などによる点検が完了したという(11月末時点)。その結果、(1)の許可・届け出などの手続きがとられていなかった盛り土が743カ所、(2)の手続き内容と現地の状況に違いがあった盛り土が660カ所、(3)の必要な災害防止措置が確認できなかった盛り土が657カ所、(4)の廃棄物の投棄などが確認された盛り土が137カ所あった。(1)~(4)は重複しているところがあり、重複を除くと何らかの問題があるのは1375カ所となる。ただ、これらのすべてが直ちに危険とは限らないという。 検討会は、危険な盛り土の発生を防止するしくみとして▽国による基本方針の策定▽不法な盛り土を発見した時の対応に関するガイドラインの整備▽関係部局間での連絡会議、人事交流の実施▽建設工事から発生する土の搬出先の明確化▽廃棄物混じりの盛り土の発生防止▽太陽光発電に関係する盛り土への対応――などを提言の中に盛り込んだ。