お祈りメールは「人格否定ではない」 企業の採用担当だった漫画家が伝えたい就活の〝裏側〟
「人格を否定された」と感じる学生
面接に同席する中で、光星さんの会社では、必ずしも「即戦力」を求めているわけではないと感じたといいます。会社側は、学生の語り口やコミュニケーション能力を見ながら、すでに働いている社員たちとの相性を見ていた印象が強いそうです。 一方で、面接で落ちると「人格を否定された」ように感じる学生が多かったというのも事実。採用担当者とはいえ、一年前には同じ立場だった光星さんは「傷つく気持ちは分かるなあ」と共感する気持ちが強かったといいます。 不採用を伝える「お祈りメール」を出す立場から感じたのは、「もちろん人格を否定しているわけではなく、縁としか言いようがない」と当時を振り返ります。 不採用となった学生には次のような言葉をかけたこともあったそうです。 「たとえば、緑色のボールペンが欲しいときには、同じパッケージのものが並んでいる中から緑を選ぶと思います。それは他の色のボールペンが優れないからではなく、欲しかったのが『緑色』だったから」 「それは就職活動でも同じで、あなたが『優れなかった』から選ばれなかったのではなく、相手(会社)が求めていたものとたまたまあなたが『合わなかった』だけなんです。だから必要以上に落ち込まなくても大丈夫ですよ」
「会社員」から「漫画家」へ
就活生に寄り添う充実した毎日でしたが、高校生の頃から漫画家になる夢を持ち続けていた光星さんは、創作活動も続けていました。 3年目に入ったところで異動があり、採用担当を外れます。異動後は、朝早く出社し、12時間会社にいるような生活が続きました。 創作活動に割く時間が思うように取れなくなり、退職を選んだそうです。 退職後は、アルバイトを週4日ほど入れながら、漫画を描く生活を続けました。 地道に創作を続けた結果、漫画編集者の目にとまり、WEB少年誌「少年ハナトユメ」(白泉社)でデビューすることができました。今では漫画家のアシスタントもしながら、創作を続けています。 光星さんが採用担当者だったのは10年以上前ですが、就活生を応援する気持ちは当時とまったく変わらないといいます。 就活生になによりも伝えたいことは「自分が企業を選ぶつもりで就活に臨んでほしい」ということ。採用担当だったころは「きみが企業を選ぶんだよ」と繰り返し伝えていたそうです。 光星さんは「今後もチャンスがあれば、就活をテーマにした漫画を描いてみたい」と話しています。 ◇ ◇ ◇ 企業が保護者に内定の確認をする「オヤカク」について、ご意見を募集しています。 6月6日締め切りです。 https://www.asahi.com/opinion/forum/202/?ref=withnews