お祈りメールは「人格否定ではない」 企業の採用担当だった漫画家が伝えたい就活の〝裏側〟
就活は、震災の記憶と結びついていて――。漫画家の光星影月(こうせい・えいげつ)さんは、本格的に就職活動を始めたとき東日本大震災に遭いました。混乱のなか内定を得て人事部で働き始め、「選ばれる側」から「選ぶ側」になって企業と学生のギャップも感じたといいます。当時の就活や、元採用担当者としての思いを振り返ってくれました。(withnews編集部・菅光) 【マンガ】就活は「震災の記憶」と結びついている。元採用担当の漫画家が経験した〝就活〟
会社説明会を終えて帰ったら
2011年3月11日、午前中に参加した会社説明会から都内の自宅に戻った光星さんは、パソコンを開いて翌日の会社説明会をキャンセルしようとした瞬間、大きな揺れに襲われました。 「午後の部に参加していたら帰宅は困難になっていたかも……」。同じように就活中だった仲のいい友人は、スーツ姿のまま、ホテルのロビーに避難して過ごしたそうです。 翌日から各社の会社説明会そのものが軒並み中止になりました。多くの会社で説明会が再開されたのは、2カ月後くらいでした。 「当時の友人たちと就活の思い出をしゃべっていても、いつのまにか震災の話になります。どうしても就活と震災の記憶が結びついてしまいます」
漫画で描いた〝震災と就活〟
光星さんは昨年、当時の経験を漫画にしました。 当初、自らの就活と震災を重ね合わせて漫画を描くことには迷いがあったといいます。 しかし、震災から2年後に参加した岩手県陸前高田市での植林ボランティアで聞いた地元の人の壮絶な被災体験を思い出し、悩んだ末に漫画を描き上げました。 「『震災を忘れてはいけない』という自分の気持ちだけは伝えたいと思いました」
混乱の中で内定、配属先は
震災後の混乱の中でしたが、光星さんは夏を迎える前には、とある会社から内定をもらい、翌年4月から新卒社員として働き始めます。 人事部配属になり、新卒採用を担当することにもなりました。「選ばれる側」からすぐに「選ぶ側」に回った光星さんは、「就活生と企業側のギャップを感じた」といいます。 採用面接の日程をひとつとっても、多くの大学のテスト期間と重なっていました。直前まで大学生だった光星さんは「企業側は大学生の忙しさを知らないんだな」と感じたそうです。 今の大学生は、どの学部でも出席に厳しいことが多く、課題に追われる毎日です。ところが採用する側の幹部たちは「授業なんかまともに出たことがない」と自慢するようなバブル期世代。会社側の都合で面接日程が決まり、試験期間と重なってしまった学生もいたため、採用担当者として申し訳なく思ったそうです。