ハイラックスの未来を拓く「水素燃料電池車」が、欧州で実証段階に突入!パリ五輪2024でも活躍しそうだ
最終段階に向けて、着実な進化を推し進めていく
トヨタ・モーター・ヨーロッパは2024年6月7日、水素燃料電池で走るハイラックスのプロジェクトが実証段階に突入したことを明らかにしました。排出ガスを一切出さない10台のプロトタイプ車を製造、欧州市場におけるゼロカーボン戦略の要として新たなマイルストーンを目指すことになります。 【写真はこちら】ペイロードや牽引能力など、ハイラックスとして求められる「高性能」を損なわずに環境への優しさを徹底(全8枚) トヨタは「マルチパスウェイ戦略」のもと、エリアごとのエネルギー供給事情や交通環境に合わせてカーボンニュートラルに貢献するパワートレーンの最適化を図ろうとしています。 その一環として2023年12月、トヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME)は、燃料電池技術の開発・生産はもちろん、販売やアフターサービスにいたるまでトヨタがさまざまな企業体と協調して事業化を進める「水素ファクトリー・ヨーロッパ」構想を明らかにしました。 今回、実証実験段階に入った「The fuel cell Hilux prototype project(燃料電池ハイラックスプロトタイププロジェクト)」は、水素技術をさらに発展させるとともに、欧州全域での水素エコシステムとインフラの展開を、より広くおしすすめるための重要な一歩となりそうです。 ベース車となるハイラックスは、世界でも有数の過酷な環境の中で、さまざまな意味での耐久性、信頼性そしてクルマとしての品質を磨きぬいてきた車両です。1968年に始まったその歴史は、ダカールラリーを始めとするサバイバルレースでの勝利の積み重ねでもありました。 燃料電池車となっても、そのDNAに妥協はありません。外観は最新のハイラックスそのものであり、エクストラキャブ形式では、全長5325mm、全幅1855mm、全高1810mmの頑丈なボディを誇ります。
2024年パリ五輪で、デモンストレーション走行を実施
コアエレメントは、2015年から商業生産が始められ、そのものの信頼性、高い品質を証明し続けてきたMIRAIのシステムを採用しています。航続距離は純粋なBEV仕様では達成が難しい最大600kmを目標としています。 ラダーフレームシャシ内に取り付けられた水素タンクは各2.6kg。合計3個を搭載することから、全体の容量は7.8kgとなります。搭載される水素は軽量なので、ハイラックスに求められる高い積載重量や優れた牽引能力を損なうことはありません。 330個のセルで構成される燃料電池スタックは、フロントアクスルの上に取付けられています。燃料電池で発電した電気を蓄えるリチウムイオンハイブリッド電池は、水素タンクの上方の後部ロードデッキに配置。これにより、キャビンスペースの広さも確保されました。 ちなみに駆動は、リアアクスルに取り付けられた電気モーターが担当。最高出力134kW(182ps)、最大トルク300Nmを発揮します。走行中にテールパイプから排出されるのは、純水だけです。 この燃料電池ハイラックスのプロトタイプは、英国ダービーにあるトヨタ・モーター・マニュファクチャリングUK(TMUK)の工場で製造されています。10台のうち5台は、安全性、性能、機能性、耐久性を評価するために、厳格なフィールドテストを実施。リアルな走行環境の中でテストドライブデータを収集しています。 残りの5台は、一般ユーザーやメディアに向けたデモンストレーション用に活用されています。2024年7月から始まるパリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会にも登場する、とのこと。注目の的になることは、間違いなさそうです。
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