プラス成長もGDPの中身は要注意 否定できない3度目の消費増税延期
市場関係者の間では、2019年10月に予定される消費増税が延期される可能性が意識されているようです。今のところ、政権内部から増税延期に関する具体的メッセージは出されていませんが、過去2回の増税延期がそうだったように、事態は急展開する可能性があります。(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) 【写真】とうとう景気後退に突入?各種の景気指標が悪化 近く政府が公式判断
「輸入減少」と「在庫」が成長押し上げる
日本経済は、失業率がバブル期並みの低水準にあるなど、過去数年の景気回復が蓄積された状態にあります。この点を重視すれば、現在の景気を「良い」と評価することに違和感はないでしょう。一方で、増税に耐えられるかという視点で現在の景気を評価すると、「黄信号」「微妙」という判断になります。財政をめぐる議論は立場や時間軸などによってさまざまな“正解”があり、実に複雑ですが、一般論としてマイナス成長下における増税は理に適っていないのです。増税して景気が冷え込んでしまうと、政府は景気対策を施す必要がありますから、結局のところ財政は改善しません。 これを踏まえ、20日に発表された2019年1~3月期の実質GDP(国内総生産)を振り返ってみます。まず、全体の数値は前期比で年率+2.1%という力強い数値でした。18年7~9月期に▲2.5%と明確なマイナス成長を記録した後、10~12月期に+1.6%とリバウンドし、そこから2四半期連続のプラスを確保したわけですから、 “まずまず”と言っても良いでしょう。 しかしながら、問題はGDPの中身です。需要項目別にみると、個人消費、設備投資、輸出の3本柱が軒並みマイナスとなる反面、輸入(の減少)と在庫が押上げに寄与しました。成長を押し上げた輸入の減少と在庫の増加は、双方とも需要の弱さに起因していますので、それを額面通り受け止めてはいけません。特に輸入は、たった一つの項目でGDPを+3.4%ポイントも押し上げていますから要注意です。また、当期に積み上がった在庫は、それが意図的なものであろうとなかろうと、翌期以降は成長抑制要因へとなり代わるため、こちらも注意が必要です。