ECビジネスの頭痛の種「返品物流」【鈴木敏仁USリポート】
興味深いのは2019年にペイパルが買収し、さらに昨年末にはペイパルからUPSが買収している点である。ペイパルの思惑は、決済を利用している企業に返品ソリューションを提供することだったのだが、おそらく想定通りにいかなかったのだろう。
一方UPSによる買収は、宅配企業にとって返品物流が無視できない存在になっていることを意味している。フォワード宅配からリターン宅配までを包括的に取り扱う時代となったのである。UPSオフィスも加わって、リターンバーは1万2000カ所以上になったと発表されている。
新しい返品サービスが続々登場
返品にまつわる新たな取り組みケースは他にもたくさんある。
パッケージハブ(宅配や引っ越しに必要な段ボール等のパッケージを取り扱うフランチャイズチェーン)とピツニーボウズ(Pitney Bowes)が提携したのは1月初頭のことである。ピツニーボウズはUSPSオフィス3万カ所で返品を取り扱っているが、これにパッケージハブ1000カ所を加えることがこの提携の目的と説明されている。
昨年中には即配のドアダッシュとウーバーが返品プログラムをスタートしている。ユーザーから返品ロケーションまで有料で運ぶサービスで、返品の効率化というよりも、返品ニーズの多様化への対応という表現が適切だが、それほど需要があるということを意味している。
高級ファッションの定額制レンタルサービスを提供するレント・ザ・ランウェイは、レンタルアイテムの宅配と集荷を同時に行うライブスワップ(live swaps)と呼ぶプログラムを実施している。行きと帰りをまとめる取り組みで、シッピングコスト削減の一助となっているとCFOがコメントしている。
またアマゾンがフェデックスと返品宅配について昨年中に協議したという情報が報じられている。自前の宅配ネットワークを持っているアマゾンは、年間宅配個数ですでにUPSやFedExを上回っていて、取扱量が激減しているフェデックスはアマゾンとの取引停止をすでに発表している。この返品に関する協議のニュースは、増え続けている返品が大きな取り組み課題であることと、リバース宅配ネットワークを持っていないアマゾンは他社との協業が不可欠なことを示唆している。