シルバー人材センターの会員数減 各地で人手確保に向けた取り組み…75歳女性が5年ぶりに活動できた理由
IT分野も開拓
高齢者が職歴や経験を生かしにくいという点も、会員減少の一因とされる。同協会によると、人材センターが扱う業務は、除草や清掃などが全体の54%、家事手伝いなどのサービスが27%を占めるなど、力仕事や補助的な仕事が中心だ。 そこで、IT分野の最先端の仕事を受注する動きも出てきた。青森県八戸市と同県むつ市の人材センターは、東京都内のソフトウェア開発会社が両市に置くサテライトオフィスに会員を派遣する。会社員だった会員らがパソコンを使って、人工知能(AI)に正確な情報を学習させる業務「アノテーション」に携わる。 八戸市の人材センター職員、名久井勇磨さん(35)は「会員から『業務に学びがあって楽しい』と好評で、やりたいと興味を寄せる高齢者も多い」と語る。
フレイル・認知症予防にも
シルバー人材センターは、高齢者の就労促進だけでなく、福祉的な役割もある。「規則正しい生活が送れる」「仲間と交流ができる」といった魅力を感じる会員が多く、城西大の塚本成美教授(経営社会学)は、心身の状態が衰えるフレイルや認知症の予防にもつながると説明する。 60歳代後半まで従来の職場で働く人が増える中、「70歳以上を対象に介護予防に役立つといった福祉的な観点からも魅力をアピールしてみては」と提案する。 実際、全国シルバー人材センター事業協会が昨年度に入会した約9万4000人に行った調査で、入会動機は「生きがい」が最多の35%を占め、「経済的理由」(21%)を上回っている。石原亘・業務部長は「色んな人が楽しんで参加できるように幅広い活躍の場を用意していきたい」と語る。 ◆シルバー人材センター= 高年齢者雇用安定法に基づき、主に公益法人が運営し、約8割の市区町村にある。地域の家庭や企業、官公庁から仕事を受注し、請負や委任、派遣などの形で会員に依頼する。ひとり平均月約8日働き、月約3万6000円を得ている。 (2024年10月29日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)