シルバー人材センターの会員数減 各地で人手確保に向けた取り組み…75歳女性が5年ぶりに活動できた理由
高齢者に短期の仕事や軽作業を紹介・委託するシルバー人材センターの会員数が減少している。企業など従来の職場で働き続ける高齢者が増えていることが背景にある。各地の人材センターは、会員の獲得や参加しやすい環境作りに向け、活動場所への送迎や新たな仕事を開拓するなど試行錯誤している。(山田佳代) 【図解】ペットボトルのふたはどう開けている? 開け方でわかるフレイルのサイン
9月10日午前9時頃、群馬県桐生市の市総合福祉センターにバスが到着すると、市シルバー人材センターの会員5人が降りた。地元の織物業者の依頼で、神社のお守りを作るためだ。 福祉センターはJR桐生駅から約2キロ離れており、会員が参加しやすいように、人材センターが今年6月から送迎を始めた。会員は朝、自宅近くでバスに乗り、帰りも送ってもらう。
会員の園田幸子さん(75)は5年前まで、個人宅の清掃を請け負っていた。坂道の多い自宅近くを自転車で移動していたが、体調を崩し、活動から遠ざかった。送迎開始を機にお守り作りに加わり、週5日、1日約5時間働く。人材センターから「配分金」(報酬)として月約1万2000円を受け取る。「みんなに会って話すのが楽しい。生活に張り合いが出る」と語る。 腰痛のため車が運転できないという小田根弘幸さん(60)も「移動手段が徒歩しかないので助かる。柔軟に働けるのもありがたい」と言う。
送迎費を補助
シルバー人材センターは、地域貢献を通して高齢者に生きがいを感じてもらおうと、1975年に東京都江戸川区でスタートし、各地に広がった。原則60歳以上が会員になれる。 全国シルバー人材センター事業協会(東京)によると、全国の会員数は2009年度に79万人を超えた。高齢者人口は増えているが、それ以降は減少に転じ、昨年度は約67万人に落ち込んだ。定年延長や再雇用制度が広がっているのが主な要因だ。 人材センターは、高齢者が無理なく働けるように主に臨時的、短期的な業務を受注する。会員が協力してやり遂げるため、一定の人数が必要だ。企業や家庭から依頼があっても、会員不足を理由に断らざるを得ない人材センターも出てきたという。柔軟に働きたいというシニアを地域につなぎ、活躍の機会を作る役割は大きい。 一方、「過去1年間、仕事をしていない」という会員が約2割を占めている。厚生労働省が各地の人材センターに調査すると、高齢のため車の運転免許を返納し、移動が難しい人がいることが分かり、送迎費の補助を始めた。11地域で導入されている。 桐生市の人材センターも補助を受けて送迎を開始すると、4人が新規に加入し、会員5人が新たに働き始めた。今年7月のお守りの生産量は昨年同期の1・5倍に増えた。岩下浩明事務局長は「移動手段のない人も家の外に出て生きがいを見いだせるようにしたい」と話す。