<プロボクシング>八重樫、心霊騒動を解決して世界戦へ万全
プロボクシングのWBC世界ライトフライ級王座決定戦(12月30日、東京体育館)のリングに上がる前WBC世界フライ級王者、八重樫東(31歳、大橋)の公開練習が20日、横浜の大橋ジムで行われ、3階級制覇へ向けて「力を出し尽くす」と完全燃焼を宣言した。しかし、世界戦を前に八重樫は、とんだ心霊現象騒動に巻き込まれていた……。 「なんか変な音や、鈴の音などのラップ現象が聞こえるんですよ」 3人の子持ちである八重樫は、インフルエンザなどの予防のため、家族の元を離れ12月1日からジム近くにマンションで、一人暮らしの合宿をスタートさせた。しばらくして大橋会長に、そんな悩みを打ち明けたという。大橋会長は、当初、ロマゴン戦のダメージかと心配した。 八重樫は、9月に軽量級最強の挑戦者、ローマン・ゴンザレス(ニカラグア)と対戦したが、日本のボクシング史に残る激闘の末、9回、TKOで敗れた。41戦無敗の強烈なロマゴンのパンチは、八重樫の鼓膜を破った。三半規管がやられて、しばらく真っ直ぐ歩けないほどのダメージを浴びた。再起戦、即、階級をひとつ下げての世界王座決定戦というチャンスを与えられたが、最強挑戦者との試合を終えた燃え尽き症候群からか、スランプに陥り練習のペースも上がらなかった。大橋会長は、その影響で心理現象のような音が聞こえるのではないかと疑ったが、数日後に、杞憂であることが判明した。たまたまエレベータで一緒になった隣人が犬を連れて部屋に入った。すぐに隣の部屋から心霊現象と思い込んでいた音が聞こえてきた。壁が薄く、ワンちゃんの首についた鈴の音と、部屋でバタバタと走り回っている音を、心霊現象と錯覚していたのである。 「最初は怖かったんですが、物事には必ず原因があるということがわかりました(笑)」 今では心霊騒動も笑い話だ。 スランプ状態も、今週に入ってようやく脱出した。 八重樫は、「最初は、ロマゴン戦のダメージが心配だったが、もう問題はありません。元々、僕みたいなレベルの選手にスランプなんかないんですよ」と言うが、盟友の松本トレーナーは、「どうしても、あれだけ大きな試合をした後にモチベーションを上げにくかったのだろう。スパーもいつもより減らしました。でも、やっと気合が入ってきた。ボクサーの本能でしょう」と、スランプ脱出を待ち続けていた。