96%の会社が赤字! 路線バスが生き残るには、もはや「異業種参入」しかないのか?
小型EVで地域活性化を加速
2024年6月から、東急バスは小型EVとEVスクーターのカーシェアリングサービス「ハローモビリティ」の運営事業者としても参画している。 筆者の大学に近い東急バスの等々力操車場のほか、オアシスたまプラーザにもステーションが設置されている。トヨタ自動車の超小型EV「C+pod」も2台導入されている。 この取り組みの進んでいるところは、 「自社の路線バスと競合する可能性」 もある自転車や小型モビリティの事業に踏み出したことだ。利用者はその日のニーズや気分、体調に合わせて、さまざまな移動手段を選択できる。もちろん、東急バスには路線バス以外の収益源となるが、地域モビリティを俯瞰(ふかん)し、SDGsへの取り組みを通じて ・モビリティの確保と移動の利便性の向上 ・地域活性化と街の魅力向上 ・脱炭素社会 の実現を目指している。
革新をもたらす異業種アイデア
路線バスの専門家として、筆者は各所で 「バス事業者の異業種参入は当たり前」 と常々いってきた。“大きな箱”であるバスをただ走らせる時代は終わった。サウナバスなどのアイデアも、もはや否定できない。観光農園や小型モビリティなど、異業種参入で路線バスを守ろうとする企業の努力は高く評価されるべきだ。 経営的な観点から見れば、バス事業者は異業種参入などの思い切った手を打つしかない。実際、この3年間で、将来を見据えた事業転換に挑むバス事業者が増えている。 コロナ禍による乗客数の大幅な減少はバス事業者にとって大きな打撃となり、また、テレワークの拡大により、バス事業以外の分野で新たな収入源を確保する努力を余儀なくされる状況となっている。 このような異業種参入は、今や「当然」の流れとなっている。バス事業者は、 ・バスの空席 ・営業所の空室 など、すでに持っている資源から収益を生み出すという課題に直面している。このような企画力は非常に重要であり、今後試されることになるだろう。バスとその周辺の問題を解決するビジネスがもっと生まれることを心から願っている。
西山敏樹(都市工学者)