現役ドラフトで巨人からヤクルト加入 北村拓己は開幕1軍で奮闘中「やってやるんだという気持ち」
「スポーツ報知」各球団の担当記者が推す選手を紹介する「推しえて」第1回は、ヤクルト・北村拓己内野手(28)。昨年12月の現役ドラフトで巨人から加入したユーティリティープレーヤーは開幕を1軍で迎え、ここまでスタメン1試合を含め7試合に出場。限られた出場機会の中、7打数1安打で打率は1割4分3厘。故障で離脱中の山田哲人内野手(31)の穴を埋めるべく奮闘中だ。亜大の先輩で、昨季まで同僚だった松田宣浩氏(40)に負けない元気印として、“熱男イズム”の継承と古巣への恩返しを約束した。(取材・構成=長井 毅) 【動画】ヤクルトに移籍した北村拓己が坂本勇人、岸田行倫らと談笑 ユニホームが変わってもやることは変わらない。北村拓はオープン戦16試合で打率2割9分6厘、5打点を結果を残し、開幕1軍を勝ち取った。喜びをかみ締めながらグラウンドに立っている。 「1軍でまたプレーできる。(まだまだ野球が)やりたいんだ。やってやるんだという気持ちです」 遡ること4か月前。現役ドラフトでヤクルト入りが決まった。今後の野球人生を左右する岐路。当時は愛着のあるチームを離れることもあり、複雑な心境だったが、仲間たちが背中を押してくれた。 元チームメートの松原、岸田、湯浅らとはよく食事に出かけていた。特に年の近かった1歳上の松原からは「寂しいな。そやけど、お互い頑張ろう。チームは違うけど、同じ東京だし、またご飯行けるな」と激励された。同じ内野手で大先輩の坂本に連絡すると、「そうか…。決まったか。でも、お前にとっては(出場機会が増える可能性があり)よかったんじゃないか? お互い頑張るぞ」とエールを送られ、気が引き締まった。 「シーズンに入ったら敵、戦わないといけない相手。それとは別に、僕も6年間お世話になってジャイアンツでやっていたので、感謝の思いというのは個人で持ちながら野球に取り組んでいきたい」 また、巨人では大きな“財産”となる出会いにも恵まれた。昨季、ソフトバンクからベテランの松田が加入し、同僚となった。 「松田さんが去年、巨人に来られた時に『1軍も2軍もユニホームを着ているのは一緒。野球をしていることに変わりはない』と話されていた。こんな大ベテランの人が2軍でも声を出して一生懸命やっていましたし、1打席打てなかったら、すごく悔しがっていた。そういう姿勢は見ていて勉強になりました」 亜大の先輩の野球と真剣に向き合う姿勢は今後の一つの指標になった。 「松田さんは後輩の僕に対して『俺もジャイアンツに来て1年目だから、いろいろ教えてくれ』と言ってくれましたし、分からないことも聞いてくれた。打撃のことも『(フォームが)今どうなってる? こうなってる?』と聞いてきてくれる。そういう貪欲さ、すごく野球が好きなんだと思いましたし、取り組みがすごく勉強になりました」 長らくプロで第一線を張ってきた選手に感じたのは高い向上心だ。 「ユニホームを着ている間は松田さんのようにやらないといけない。ベテランなのに、『野球がうまくなりたい』という気持ちがすごい。坂本さんにしても、それはすごく感じました。今、ヤクルトに来ても石川(雅規)さんや青木(宣親)さんを見ていると、『うまくなってやろう』という姿が見える。それが共通していて大事なことなんだなと思いました」 今年で7年目。「1年でも長くプレーしたい」との思いの根底には家族の存在がある。3歳の長女と1歳の次女が日々の癒やし。 「長女は最近、テレビで僕を見つけたら『パパ~』って言いますし、ちょっと分かるようになってきているので、格好いい姿を見せられるようにしたいですね」 開幕戦で正二塁手の山田が故障し、長期離脱の見込み。高津監督は「もっとチャンスを与えてもいい」と期待している。内野なら捕手以外どこでも守れる北村拓が“起爆剤”になる可能性は十分にある。 ◆北村 拓己(きたむら・たくみ)1995年8月29日、金沢市生まれ。28歳。十一屋(じゅういちや)ファイターズで軟式野球を始め、星稜中から星稜高に進み、3年夏に甲子園出場。亜大3年時に大学日本代表。2017年ドラフト4位で巨人入り。23年の現役ドラフトでヤクルトに加入。アイドルグループ「アイドリング!!!」元メンバーの伊藤祐奈さんと20年1月に結婚。181センチ、90キロ。右投右打。今季年俸1700万円。
報知新聞社