政策判断に時間的余裕の表現不要、米経済リスクが低下-植田日銀総裁
衆院選での与党の過半数割れによる政局混迷や円安の再進行に加え、米大統領選も来月5日に控えており、日銀の政策スタンスに注目が集まっていた。展望リポートの内容からは政策正常化路線が維持された一方で、海外経済と市場動向への警戒感も示された形だ。
野村証券の岡崎康平チーフマーケットエコノミストは、25年度のコアCPIが若干下方修正されて見方がやや慎重になっており、「全体的にハト派な見方に変わった印象を与える」と説明。ただ、政策効果や足元の原材料価格の低下などもあるため、基調的な物価は変わっておらず、「日銀のシナリオに沿った動きだと理解してよい」と述べた。
ブルームバーグが17-22日にエコノミスト53人を対象に実施した調査では、政策変更を予想したのは1人だけだった。次回の利上げ時期の予想は12月が53%、来年1月が32%となっており、両会合で85%を占めた。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは、日銀としては「全体的には今後正常化を進めていくのにオントラック(順調)だという説明になると思う」と指摘。海外経済の不透明性から利上げを見送ったとの見方を示した上で、「円安がさらに進めば、12月にも利上げをするだろうし、今回の展望リポートはその可能性を否定するものではなかった」と述べた。
今回の会合には赤沢亮正経済財政担当相が就任後、初めて出席した。従来は財務副大臣として1月以降の会合に毎回出席していた。
--取材協力:氏兼敬子、野原良明.
(c)2024 Bloomberg L.P.
Sumio Ito