2億年前、蝶は地上を舞っていた?独で世界最古の化石発見、その新証拠とは?
約2億年前の最古の記録
さて蝶と蛾の種を含む一大昆虫グループ「チョウ目(Lepidoptera)」は、地質年代上、いつごろ現れたのだろうか? 今回の研究論文に記載されている化石標本は、なんと「三畳紀とジュラ紀の境界線」をまたぐドイツ北部の地層から発見されたそうだ。約2億160万年前ということになる。チョウ目の祖先は、三畳紀に現れた初期の恐竜達を見下ろすように、悠々と空中を飛び回っていたに違いない。蝶と蛾も「生きた化石」のメンバーに加えておいていいようだ。 ― 名前いくつ挙げられますか?太古と現代生物種の架け橋「生きた化石」(上) ― 変わらぬことで生き延びた?進化の奥深さムカシトカゲ「生きた化石」(下) ちなみにドイツの化石現場は、周囲をうっそうと茂る森林に囲まれた場所に位置している(下の化石産地の写真参照)。地表が草木に覆われているこうした場所では、基本的に化石や岩石そのものを見つけることが難しい。しかし、今回の研究チームはドリルを使って採取された、筒状の形をした岩石のコアサンプルの中に、チョウ目の化石を見つけた(右の写真参照)。(こうした岩石のサンプルは、主に地層における堆積の様子や岩石の細かな特徴を調べるため、地質学者がよく用いる。)
こうした岩石のサンプルを地質学者は顕微鏡を用いて調査する。鉱物の小さな粒などは岩石のタイプを判定するのに重要な情報を与えてくれる。 今回この岩石の中に非常に微小だが「最古のチョウ目」の証拠が見つかった。
ミクロサイズの鱗粉化石
今回の研究のリーダーであるヴァン・デ・シューツブラッグ博士(Dr. van de Schootbrugge こちらのホームページ参照)は、私のリクエストに気前よく、上の4つの写真をこの記事のために分けてくれた。まずはとっくりと約2億年前の虫の雰囲気を味わっていただきたい。
流線形の輪郭それぞれの長さは0.02から0.1mm程だ。非常に小さく肉眼ではほとんど確認できない。普段、街中や野外で目にする蝶や蛾の体の一部と、直接イメージが結びつかないかもしれない。そのため少し想像力を働かす必要がある。 実は一つ一つ極小の透明性を帯びたモノは、いわゆる「鱗粉(りんぷん)」と呼ばれるものだ。現生のチョウ目のほとんどの種が、共通して備えている代物だ。(スカシバガ科のように鱗粉を進化の過程で二次的に無くしたものも例外として存在する。)