断トツ最下位だったコルトレイクを1部残留に導いた藤井陽也。指揮官も「お前はもっと上でやれる」と太鼓判を押す特大のポテンシャル【現地発】
僕が来る前は、ハイライトとかを見てもボロボロの試合が多かった」
コルトレイクとSTVVは共に3CBシステム。藤井は右、谷口彰悟(STVV)は左のCBだった。つまり2人は直接マッチアップこそしなかったが、常時、同じレーンでプレーしていた。試合後、谷口に藤井のプレーを尋ねてみた。 「陽也は一緒に代表で一度プレーして、『すごいポテンシャルを持っているな』と感じてました。今日は陽也がボール持つと、あえて僕が相手に食いついたり離したり、駆け引きしながらやってました。そして彼は『僕がどのぐらい食いついてくるのか』、そういうことを見てました。彼は僕のポジションをよく見て、あえてパスを出さなかったりしてましたね。『直接的なマッチアップ』はありませんでしたが、そのへんの駆け引きを間接的にやり合うことができて、楽しかったです。陽也は日本人らしくボールを雑に扱わず大切にする。そしてちゃんと相手を見てプレーしていた。そのことをすごく感じました」(谷口) 日本代表に二度招集された藤井にとって現状、唯一のキャップが1月1日の対タイ戦(5-0)。名古屋からコルトレイクへの半シーズンの期限付き移籍が発表されたのは、その10日後だった。 当時のコルトレイクは20戦して勝点わずか10しか奪えず、最下位に沈んでいた。ピッチ外でもクラブの騒動が絶えず、ベルギーでは「コルトレイクの降格間違いなし」と断言されていた。しかし1月20日、藤井にとってはベルギーデビューマッチのスタンダール戦(1-0)で、8試合ぶりの勝利を飾ってから少しずつコルトレイクは上向いていく。 翌ルーバン戦(0-0)から角田涼太朗(現カーディフ)が加わり、右から藤井、ジョアン・シルバ、角田のCBトリオが完成。コルトレイクは強固な守備を誇るチームになった。 「僕が来る前は、ハイライトとかを見てもボロボロの試合が多かった。でも自分が行くからにはやっぱり残留させたいと思ったし、自分のプレーでチームを勝たせたいと思ってました。監督が変わり『スリーバックでしっかり固く守る』というところを前提として、そこからチーム全員が共通意識を持ってやれました」 22年1月から1年半、コルトレイクでプレーし、23年夏にヘントへステップアップしていった渡辺剛は最初の半年間はかなり苦労した。藤井がすぐにチームに馴染めたのはなぜだろうか。 「やっぱり角田選手の存在は大きかったです。2人がセンターバックの両脇で出ていたのでコミュニケーションが取りやすく意思疎通ができて、スッとチームに入れたかなと思います。 あとは2人が監督に信頼してもらって使ってもらえた。普段の声掛けからすごいポジティブな感覚で自分たちを使ってくれました。そこはやっぱり監督の信頼が大きかったと思います」 その監督とは1月から指揮を執るアイスランド人指導者フレイル・アレクサンダーソンのこと。「1日18時間仕事をしている」というサッカーの虫は「うちのチームにメンタルトレーナーはいらない。俺がメンタルトレーナーだ」と豪語する人物でもある。彼の監督就任によってコルトレイクにポジティブな風が吹くようになった。 「マネジメントが前向きで、声掛けもポジティブで『付いていこう』と思える監督です。監督から『お前はもっと高いレベルでやれる』とずっと言われてます。僕を励ますためなのか本当なのかわかんないですけど、そういう前向きな言葉を信じてやるしかない」
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